大きなチャンスを逃している? WEB広告 よくある3つの勘違い

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97年以降右肩上がりで急成長を遂げるWEB広告市場。2021年にはWEB広告費がついに4大マスメディア広告費の合算を超えました。「WEB広告は中小企業にこそ大きなチャンス」と話すのはWEB集客支援のプロ、SOLU(ソルー)のマネージャーの松原克哉さん。同時に「ウェブ広告の勘違い」が中小企業のビジネスの成長を停滞させている可能性があるとも指摘!その真意とは?

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松原克哉(まつばら・かつや )

SOLU株式会社 マネージャー

 

新卒でベンチャー企業の広告代理店に入社。

2016年度上半期YahooJapanエージェンシーカンファレンスにて2015年度下半期MVP賞を受賞。

現在、SOLUに参画。日本一若いwebマーケティング会社を創ることにコミットし、日々奮闘中。趣味はサウナ。

WEB広告で中小企業はチャンスの時代に

編集部(以下、――)今回のよむどーのテーマはWEB広告です。動画活用の相乗効果も期待できることはもちろんですが、一番は、中小企業のみなさんにお役に立てる情報だということです。WEB広告のプロ直伝ですから、ぜひご活用ください。早速ですが、WEB広告といっても、「インターネット広告」「SNS広告」「デジタル広告」など色々な呼び方がありますよね。まず「WEB広告」を定義していただけますか?

 

松原さん(以下、敬称略) 「WEB広告」を定義するとしたら「インターネットを通じた全ての広告」です。Web上のメディア(媒体)やSNSの広告、WEBサイトやアプリの広告枠に表示されるディスプレイ広告や、GoogleやYahoo!といった検索エンジンの検索結果の画面に表示されるリスティング広告など、種類も豊富にあります。総じて「WEB広告」とご理解ください。

 

―― WEB広告を主軸にクライアントのWEBマーケティング全般を支援するSOLUさんですが、SOLUさんのクライアントさんは具体的にどのような成果をあげているのですか?

 

松原 FC(フランチャイズ)展開しているクライアントがWEB広告を駆使し、2年間で業界最速1000店舗のFC展開を達成

約1カ月のプロモーションで広告予算2000万、売上1億円(ROAS(広告費回収率)500%)のローンチに成功、など本当に大小様々な事例があります。

 

―― 2021年にWEB広告費が4大マスメディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の広告費の合算を超えました。WEB広告は97年以降右肩上がりに成長していて、スピードも凄まじいものがあります。とはいえ今でも「広告=大手企業」といった風潮があり、中小企業は活用に及び腰な気がしていますが、いかがでしょう。

 

松原 WEB広告は中小企業にとってこそ、大きなチャンスです。今日は、中小企業が陥っている大きな勘違いについて詳しくお話したいと思います。

【勘違い その1】 「とにかくお金がかかるんだよね?」

松原 まず、現在のWEB広告の特長を掴んでもらう上で、とても分かりやすい例がYahoo!のトップページのディスプレイ広告です。この枠(下図、右側のグレーの部分)、1週間掲載するとどのくらいの費用がかかると思いますか?

―― タイミングにもよると思いますが、数100万円単位じゃないですか?ここは私も、毎日何回も見ています。

 

松原 やっぱりそう思いますよね。でも実はその認識は古い情報のままアップデートされていない状態です。今、この枠は運用型広告になっていて、1クリック100円台くらいだと思います。つまり、クリックされない限り課金されないんです。

 

―― そうなんですか!!掲載するだけで莫大な費用がかかる純広告(特定のメディアの広告枠を買い取り、広告を表示すること)だと思っていました。

 

松原 WEB純広告の代表的な存在であったYahoo!のトップページの広告枠が、今ではクリック課金の運用型広告枠になっているというのは、まさに現在のWEB広告のあり方を象徴する分かりやすい例だと思います。そしてこれは、中小企業にとってチャンスの時代を迎えている証です。だからこそ、WEB広告というステージで成果を出すためには、最新の正しい知識が必要だと思います。かつての純広告のイメージから抜け出せない企業は、「広告は掲載料が莫大にかかるからできない」と思い込んでいますよね。それだけで選択肢もチャンスの幅も自ら狭めることになってしまいます。

 

―― 確かに、その通りですね。

 

松原 WEB広告の課金方法は様々です。先ほどのYahoo!の例のようなクリックされたら料金が発生するクリック課金や、広告の表示回数ごとに料金が発生するインプレッション課金、ユーザーが広告に対してエンゲージメントをした時点で料金が発生するエンゲージメント課金などなど。さらに動画の場合は、動画広告を一定時間視聴すると料金が発生するものから、最後まで再生された時に料金が発生するものまで、様々な課金形態があります。

 

―― なんだか複雑で難しそうですね…。

 

松原 確かに、それだけ聞くと、非常に難しく感じる方が多いかも知れませんね。しかし、ここで最も重要なことは、現在のWEB広告の主流となっている運用型広告は、掲載するだけで莫大な予算がかかる仕組みではなく、「何に対して広告費を払うのか」を自分で決めることができること。そして、その予算も自分で上限額を自由に設定でき、目的と予算に合わせた広告出稿が可能になっている ということです。極端に言えば、月1万円からでも実施することができますからね。これは、かつての純広告と比較すると相当大きなメリットがあります。

 

―― 中小企業でも、自分たちの状況に合わせて広告を活用しやすくなった という事ですね。

 

松原 はい、おっしゃる通りです。一見複雑に見えるWEB広告ですが、その仕組みを理解して取り組めば、非常に自由度が高くて 自分たちの目的や状況に合わせて活用しやすくなったということなんですね。例えば、一度広告を入稿すると掲載期間中は内容を変更することが出来ないという、かつての純広告のイメージに引っ張られている方もいらっしゃいますが、現在のWEB広告は反応を見ながら いくらでも内容を変更・修正することが可能です。

 

―― 確かに、掲載期間中に広告の内容をいくらでも変更・修正できる というのは、運用型WEB広告の大きなメリットのひとつですね。

【勘違い その2】 「SNS広告はうちには向いてない」という思い込み

松原 そしてWEB広告における大きな勘違いが「思い込み」です。一番よく聞くのが「うちはBtoB(Business to Businessの略)だからSNS広告はやっても意味がない」ということ。SNS広告はBtoC(Business to Consumerの略)向けと思っているのだとしたら、それは大きな間違いです。

 

―― 確かに一般的には、「SNS=個人」ということで、BtoC向けのイメージが強いかも知れませんね。でも、そうではないと。

 

松原 はい、「toC」であれ「toB」であれ、どんなビジネスでも、ニーズを抱えていて それを解決してくれる商品やサービスを探しているのは「人」ですからね。SNS広告は 以前とは比べ物にならないほど「人」のターゲティング精度が高くなっていますので、逆にリスティング広告(ユーザーが検索したキーワードに合わせて表示される広告)よりも結果を出しやすい中小企業が非常に多いと思います。実際に、BtoB企業もTikTok、LINE、Instagramなど、SNS広告で成果を出している企業は山ほどあります。

 

―― 「SNS広告は若い人向け」というのも間違った思い込みですか?

 

松原 はい、それも完全に間違った思い込みです。そして非常に多いですね(笑)。

 

―― 私自身もTikTokは若者、Instagramは女性といったイメージがあるかもしれません。

 

松原 それは明らかに初期の頃のイメージに引っ張られています。SNSはとにかく動きが速いので、イメージと実際のデータはかなり違うと思った方がいいです。実際に弊社のクライアントでも、普通に60代以上の方々から多くの反応がありますし、「SNS=若者」という認識は今すぐ書き換えた方がいいと思います。例えば、TikTokで言うと30代男性のユーザーが顕著に増えています。TikTokで採用に成功している企業もとても多いです。

 

―― SNS広告に関して、他にも勘違いはありますか?

 

松原 SNSアカウントの運用と広告運用をごっちゃにしている企業がとても多いですね。

 

―― えっと・・・どういうことでしょうか。

 

松原 「自社でSNSのアカウントをしっかり運用してフォロワーがいないとSNSで広告を出しても意味がない」と勘違いしている人が多いんです。でも、フォロワーの多い少ないということと、広告出稿は全く別物なんですよね。

 

―― それは、極端に言えばアカウントを開設していなくても、SNS広告は成果が出せるということですか?

 

松原 はい、そういう事です。SNS広告は、すでにファンになってくれている方々への発信ではなくて、これからファンになってくれる可能性がある人達を見つけるための手段なので、広告を見た相手を連れていく先はLP(ランディングページ)だったりWEBサイトだったりしますからね。広告を打つSNSのアカウントでフォロワーがどれだけいるかは全く問題ではありません。

 

―― あぁ!なるほど。フォロワーへの情報発信と、SNS広告とでは届ける相手が全く違いますね。

 

松原 はい。とてもシンプルですが、ここを勘違いされている方が多いんです。新規でアカウントを作成した直後に広告運用することも日常茶飯事です。

【勘違い その3】 「一度やってみたが成果が出なかった=うちには向いてない」という決めつけ

松原 それから、これもよく言われるのですが「やったけど、思ったより結果が良くなかった」と。だからウチには向いていないと決めつけてしまっている、ここも大きな勘違いです。結果を出す方法は必ずあります。媒体や商材のせいにしては絶対にダメです。

 

―― 結果が出ない企業に共通していることは何でしょうか。

 

松原 まずテストの量が圧倒的に足りていないと思います。WEB広告の世界というのは、試行錯誤の量だけがものをいいます。どんなデザインがターゲットの目にとまるか、どんなコピーが刺さるか。とにかくテストをし続けないことには分からないんです。

 

―― 具体的に「テスト」というのは何をするのでしょうか。

 

松原 ここでいう「テスト」というのは「クリエイティブテスト」です。例えば、同じコピーを使った6種類のデザインを同じターゲットに対してテストした場合、どのデザインの反応が良いか効果測定できますよね。次は、同じデザインでコピーを変えてみてテストする・・・といった感じで結果が出るまでテストを繰り返します。

 

―― なるほど。広告出稿中でも「キーワード」「広告文」「デザイン」などを変更できるのはWEB広告のメリットですね。その中で、上手くいく勝ちパターンを見出せば、結果は出し続けることができますね。

 

松原 はい。ここで重要なのは、上手くいかなかった時の理由もしっかりレビューすること。ここを蔑ろにしている企業が多いです。いかなる場合も仮説をたてて検証し改善するというPDCA( Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもの )をスピード感を持って回すことです。これ以外に勝ちパターンを見つける方法はないと思います。

 

―― テストの量については、どれくらい必要なのでしょうか。

 

松原 広告を打つ目的や、商品やサービスの特性などによって変わってくるので一概には言えませんが、10~20パターンくらいのテストでは全然足りないケースがほとんどだと思いますね。なぜかというと、ターゲティング精度が劇的に上がっているという事は、その要素の掛け合わせパターンが ほぼ無限に存在することを指すからです。分かりやすく例えると、自社のターゲットへのアプローチが1万パターンある中で、10~20パターンを試したところで そこから何が分かるでしょうか?という話ですね。でも通常はそれどころか、3パターン、多くても6パターン程度をぐるぐる回しているだけ、という企業がほとんです。それだと何も検証ができないので、結果を出し続けられるワケがないんです。

 

―― 「試してみないと分からない」というのがWEB広告の真実なんですね。

 

松原 その通りです。一番強い企業は目的を明確にし、そこに向かって試行錯誤し、広告を出し続けている企業です。それによって「何をするとどうなるか」というノウハウをアップデートし続けているんですね。たとえ過去に上手くいっても、同じ広告を出し続ければ必ず停滞します。現状維持はありません。

 

―― でも、「それを実践するのは大変そうだなぁ…」と感じる中小企業の皆さんが多いような気がします。その辺りのコツがあるんでしょうか?

 

松原 はい、もちろんです。机上の理屈ではなく、実践を積み重ねる中で私たちが蓄積してきたノウハウを、いくつかのテーマでお伝えしたいと思います。

 

―― おぉ、貴重なノウハウを伝授して頂けるんですね!松原さん、ありがとうございます!

 

次回は、具体的なSNS広告運用の方法についてご紹介します。お楽しみに!

 

取材社 情報

SOLU株式会社

https://solu.co.jp/

 

出典

2021年日本の広告費 電通

「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」