よむどー総集編Vol.3 「業界初」に挑んだリーダーから学ぶ 「オンライン」でヒットを生んだ成功の極意
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総集編第3弾!コロナ禍を機に業界初の「オンラインサービス」を大成功させた事業者の挑戦と今に焦点を当て、成功の極意を紹介します。
業界初のオンラインサービスはこうして生まれた
コロナ禍をきっかけに数々の「オンラインサービス」が生まれました。今回は「業界初」のオンラインサービスを始めた先駆者たちの成功事例を紹介します。
最初にご紹介するのは、香川県仲多度郡琴平町(なかたどぐんことひらちょう)に本社を置き、バスツアーを企画・販売する琴平バス。2020年、新型コロナウイルスの影響でバスツアーが全て中止になり、20年3月4月の売上はゼロという前例のないピンチに見舞われます。
このピンチから生まれたのが、業界初の「オンラインバスツアー」でした。他業界で徐々に増えてきた「オンライン〇〇」というサービスに目をつけ、わずか3日で社内のトライアルツアーを実施。社内から出た厳しい意見を取り入れ反映・改善し、再トライアルを経て2週間後にはプレスリリースで発表します。Zoomを活用した90分間の日帰りバスツアー「業界初のオンラインバスツアー」が誕生したのです。
そのスピード感は圧巻です。マスメディアからも注目を浴び、言わずと知れた異例の大ヒット商品を生みました。
もうひとつの成功事例は「オンライン料理教室」で日本一に輝いた糸原絵里香さんです。大学院卒業後「新卒シェアワーカー」になる決意をし、民泊業や家事代行、料理教室などを運営していた糸原絵里香さんもコロナでリアルに人と接する仕事が激減します。
前例もベンチマークもない中で、500件以上の家事代行の経験をいかして始めた「オンライン料理教室」。しかし、初回の参加者は年配の男性ひとりだけ。回を重ね、とにかく参加者のリクエストに応え続けることでジワジワと人気に火がつきました。「学びたい人」と「教えたい人」をウェブ上でマッチングするサービス「ストアカ」で52,000講座の頂点(2020年度)に輝いた糸原さんの1番人気のコンテンツは、1時間半のレッスンで5品を作る時短料理教室です。参加費は1,000円とお手頃価格で、材料費は3,000円以内。自宅から参加でき、作ったものが自分たちの食事になる。コロナ禍で生まれた新しい形の料理教室です。
大ヒットの裏に数々の工夫
各社の商品・サービスをヒットに導いたオンラインならではの工夫に焦点を当ててみましょう。まずは琴平バスのケースです。
オンラインバスツアーは、Zoomを活用した90分間の日帰りバスツアーです。参加者が「日常」である自宅から参加するため、「非日常」の世界へ誘う演出が散りばめられています。例えば、参加者には事前に『旅のしおり』、『紙製シートベルト』、ツアー中に皆で一緒に食べる特産物が手元に届きます。そしてツアー当日、運転手の声や添乗員のMC、そしてリアルなバスのエンジン音や道中の美しい風景など、音と映像でバスの旅を演出することで、参加者はグッと非日常の世界に没入できるのです。
さらに、ガイドと参加者、参加者同士のコミュニケーションを非常に大切にしていることから参加可能人数は最大15〜20名に絞っています。また、チャット機能があることで、リアル以上に質問をもらうこともあるとか。実際に「ガイドに会いたい」という理由でリアルで現地に訪れるというケースも増えているそうです。
糸原さんの工夫は「教える人」ならでは。
調理方法は極力シンプルに。調理器具はコンロ1つにフライパン1つ、まな板1枚と包丁の4点だけ。電子レンジも使いません。今起こっていることを画面に全て見せ、何度も復唱し、遅れている人がいないか目を配ります。
私も糸原さんの料理教室に参加しましたが、特に作業や時間に追われることもなく、比較的余裕をもちながら、あっという間に5品が完成しました。いつでもチャットで質問ができる点も便利でした。糸原さんは「本来、料理教室は“イベント”です。でも、私が提供しているのは『家事』なんです」と言っていましたが、まさにその通りでした。
開催時間にもヒットの秘密が。
オンラインバスツアーは、10時に出発し11時半で終了です。午前中で、しかも所要時間は90分ということもあり、参加のハードルがグッと下がるそう。リモートワークが主流となった今、午前休をとってオンラインバスツアーに参加し、他の参加者さんから「行ってらっしゃい」と見送られて、午後お仕事するという方が多いとか。午前はツアー、午後はツアー業務以外に集中できることから、業務効率の面でツアーを主催する側にも非常にメリットがあります。
糸原さんのオンライン料理教室も、午前中の開催は10時半、午後の開催は16時からに設定しているのは、完成した料理をそのまま家族と一緒に食べてもらうため。これも参加者の声を反映させたそう。一人で参加すれば「家事」に、家族みんなで参加すれば「イベント」になると喜ばれているそうです。
また、開催時間の最後の30分を参加者が任意で残れるようにしている点は2者に共通しています。オンラインバスツアーの場合は、お客様同士の交流時間に。オンライン料理教室の場合は、大家族分のご飯を作っている方は仕上げる時間や、糸原さんへの質問タイムになっています。このように、参加者のニーズを上手にくみとり、満足度につなげている点もヒットにつながっています。
誕生から2年。進化したオンラインサービスの今
琴平バスさんは2022年1月から「ご当地Vtuberとのオンラインバスツアー」をスタートさせました。普段から地域の魅力発信を行っているご当地Vtuberと琴平バスがコラボすることで、より地域に特化した案内ができているそうです。通常のオンラインバスツアー参加者は50~60代が多かったのに対し、Vtuberのファンの30~40代の新しい顧客層の獲得につながっています。2022年6月には琴平バス専属のVtuber※「海杜(うみもり)こと」も誕生!
※主に「2Dまたは3Dのアバターを使って活動しているYouTuberのこと
旅行業界ではオンラインサービスを取りやめる動きもある中、オンラインバスツアーをどんどん進化させる琴平バス。以前、琴平バスの楠木社長を取材した際、こんなことを言っていました。
「よくオンラインバスツアーとリアルのツアーについて比較されるのですが、その点はいつも違和感を感じています。私は、オンラインとリアルでは、それぞれの違う役割と価値を持っていると思います。そしてコロナ禍をきっかけにオンラインツアーもリアルのツアーも境はなく、ボーダレスなものになってきました。何度も行きたくなる旅先というのは『そこに会いたい人がいるかどうか』だと思います。私たちは、それを目指してサービスを提供しています」
他社とのコラボだけでなく、他業界とコラボすることで、新しい価値を提供しています。ご当地Vtuberとのオンラインバスツアーが、旅行業界全体を盛り上げ、新しい旅のスタイルとして定着することを期待しています。
糸原さんは、NHKや民放のテレビ番組に出演する他、雑誌でレシピを紹介するなど知名度も高くなり、2022年8月には処女作の出版も決まっています。
また、ストアカのレッスンをHISや楽天シニアでも販売する他、サントリーウェルネスでのアンチエイジングレッスン、企業やマンションの福利厚生・住民イベントとしてのレッスン、学校イベントや大学研究協力としてのレッスンなど、活躍の場がどんどん広がっています。YouTubeチャンネル「いとえり時短クッキング」では、得意のライブ配信やYouTubeショートを活用するなど、フットワークの軽さも健在です。
オンラインサービスは「リアルの代替」ではありません。これまでに「ありそうでなかった」サービスを提供することで、顧客も気づいていない新しい価値を提供しています。今後の益々の活躍を期待しています。
最後に、取材の時お二人からいただいたアドバイスをご紹介します。
久保さん「まずはiPhoneを持って外へ出て、何か撮影してみましょう!そこから私たちの世界は広がりました。全てはそこからだと思います」
糸原さん「動画だけでなんとかしようと思わず、マーケティングツールの一つとして考えてみてはいかがでしょうか」
ぜひ、動画やオンラインをビジネスに活用してください。
以前ご紹介した記事はこちらから
日本初オンラインバスツアーが大ヒット!「新しい観光」を生み出した成功の秘訣 【始動編】
オンラインバスツアーの大ヒットに学ぶ 動画活用の新たな可能性【発展編】
52,000講座中1位のオンライン料理教室 驚異のリピート60回を生む3つの工夫
取材社情報:
琴平バス株式会社
コトバスオンラインツアー:
https://www.kotobus-tour.jp/tour/online/
YouTubeチャンネル:
https://www.youtube.com/user/KOTOBUS459/videos
株式会社かっぽうぎ
キッチンが楽しくなるオンライン料理教室:
https://www.street-academy.com/steachers/196974
いとえり時短クッキング
https://www.youtube.com/channel/UC0K6OJVlU1y5h75YmjH8HJw