脱『再生回数 至上主義』 ビジネス動画 活用の本質
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今回取材をした大林さんは、税理士や行政書士、社会保険労務士といった「士業」専門のホームページ制作やWEBマーケティングを支援する株式会社ミリオンバリューの代表です。大学卒業直後、22歳で起業した大林さんは、当初から動画を活用してきました。現在は会員制のEラーニング「士業の学校」を主宰する他、YouTubeチャンネルの運営、社内の業務効率化まで幅広く動画を活用されています。今回は、多くの事業者が陥りがちな「動画活用の落とし穴」とその回避方法、成果を上げるために重要なポイントなど、ご自身の経験から学んだことを惜しみなくお話いただきました。
時間効率を追求した末にたどり着いたのが「動画活用」
大林さんは、士業に特化したWEB集客のコンサルティングを専門にしています。
大林社長(以下、敬称略):他の業界と同様に、士業の業界もWEB集客はもちろん、他社とどう差別化していくか、といったマーケティング的な視点が非常に重要になってきています。ですからWEBマーケティングやホームページ制作のコンサルティングを通じて、その生産性を高める支援をしています。
本格的に動画を活用し始めたのは3年前。多くのクライアントを抱え、膨大な業務に追われる中で、時間効率を追求した末にたどり着いたのが動画でした。
大林:士業の方をターゲットにしたサービスを提供している中で、動画を活用する前は情報発信にブログを活用していました。ただ、文章を書くって、とても大変なんですよね。私は文章を書くのは得意だし、早い方だと思います。それでも、ネタを考えて、構成を作って、文章を書くという作業は、忙しい業務の中では労力的にも時間的にも負担が大きかったんです。
そこで大林さんはブログを動画化しYouTubeで配信することに。ブログを書いていた頃と比べると、作業時間が大幅に短縮されたのです。
大林:人前で話すのは好きだし得意ですから、動画の方が私に合っていました。お客様の反応もよく、労力・時間共に、業務効率も上がって一石二鳥でした。
それでも最初は試行錯誤したそうです。
大林:最初の頃は起業家の先輩の見よう見まねでした。その先輩は、ホワイトボードの前で大切なことをボードに書きながら、様々なコンテンツを動画で発信していたんです。私も同じようなスタイルで動画を撮影し、YouTubeで配信しました。ですが、私の場合はこのスタイルの撮影だと、どうしても言い間違えたり、ボードに書き間違えたりしてしまうんですよね(笑)。そのたびにカメラを止めては撮り直して。それに加えて編集作業も発生するので、定期的に発信するコンテンツの場合は、これはちょっと業務効率が悪いなと思ったんです。
常にスピードと効率を追求する大林さんは、もっと上手に動画を活用できないかを模索します。そして、たどり着いたのがパワーポイント資料を動画化し、アテレコするスタイル。動画の冒頭に大林さんの写真を載せるのみで、実写をやめたのです。
大林:もちろんビジネスの種類や発信する内容によって、変わってくると思いますが、ビジネス動画コンテンツの視聴者は「どんな人が話しているか」より「自分にとってどれだけ有益な情報か」を重視している場合の方が多い。つまり、必ずしも実写である必要はない(顔を出す必要は無い)んです。コンテンツの内容が役に立つと思えば、視聴者はちゃんと次のステップへ進んでくれるんですね。そこに気付けたのは大きかったです。
大林:基本的には私を含め2人で動画制作の作業をしていますが、実写をやめたことで作業効率はだいぶあがりました。パワーポイントの資料作成から、音声を入れて動画をアップするまで、1本あたりの動画制作時間は1時間もかかりません。顔出しで撮影するスタイルに比べると、撮り直しがなくて済みますし、編集の手間もラクになるので、時間効率はかなり改善されましたね。
時間効率が圧倒的に良い動画活用の追求
⚫︎ 動画は時間効率性が高く、文章よりも情報量は圧倒的に多い
⚫︎ パワポ資料の動画化は、より時間効率が上がる!
⚫︎ 必ずしも実写(顔出し)である必要はない。視聴者が求めているかどうかで判断する
陥りがちな落とし穴「再生回数 至上主義」
大林さんが効率を高めるために工夫した改善ポイントは、それだけではありません。
動画の再生回数やチャンネル登録数に惑わされない大切さを、自身の経験から教えてくれました。
大林:弊社のYouTubeチャンネルを見ていただくとわかりますが、チャンネル登録者数も動画の再生回数も決して多くありません。ただ、それでも十分な成果につながっています。動画の本当の目的は、顧客を獲得し売上と利益を上げることですよね。それなのに、いつの間にかそれを忘れて、再生回数を伸ばすことが目的になっている事業者さんはすごく多いような気がします。
士業専門のサービスを展開している大林さんにとって、ターゲットとなる視聴者は、あくまでも士業の人たち。それ以外の多くの人に見てもらう必要はないといいます。
大林:私の動画は、きっと一般の人は興味がない内容です。でも、士業の方が見ると知りたくなるようなピンポイントな内容になっています。そもそもターゲットが限定されているので再生回数は伸びないけど、コンバージョン率は非常に良いのです。
ここに気づくまで、大林さんにも大きな反省があったといいます。
大林:ブログが主な情報発信の手段だった頃、アクセス数を増やすことを意識していました。SEOやリスティングなど、多くの人が興味ありそうなコンテンツを発信していたんです。書いた記事のアクセス数が伸びると嬉しいし、うまく行っているような気もしてくる。ここが数字の落とし穴なんです。
確かにアクセス数や動画の再生回数はわかりやすく、一喜一憂しがちです。ただ、仮に10万アクセスあってもその中にターゲットである士業の人たちがいなければ全く意味がありません。動画の再生回数が増えると上手くいっている錯覚に陥りがちですが、「見て欲しいターゲットに見られているか」が重要だと大林さんは言います。
大林:本来の目的が顧客獲得であることを考えると、動画を見てもらった後も非常に大切です。動画を見てくださった方々の中から見込み客を獲得する工夫はもちろん、継続的なフォローや問合わせへの対応など、成果を上げるために必要なことは山ほどあります。しかし、中小企業の場合は、少ない人数で仕事を回す必要に迫られている場合がほとんどです。なので、いたずらに問合わせの数が増えればいいというワケでもありません。確度の低い問合わせ対応に忙殺された結果、実際の受注・契約はゼロだったみたいな状況は避ける必要があります。
「自分たちが提供しているサービス内容にマッチした顧客」と長期的に良好な関係を築いていけることが理想。少ない人数で対応するためには、アクセス数や再生回数に惑わされず、ターゲットを明確にして有益な動画コンテンツを作成・発信し続けることが大切。大林さんはこのことを身をもって経験したのです。
大林:何のために動画をやるのか、ビジネスにどう役立てたいのかを明確にすることが基本です。このポイントさえ押さえていれば、問合せの確度も高くなりますし、そこから成約につながる確率も高くなります。
YouTubeを見た人たちからの問合わせについても、あえてワンクッションを挟み、生産的な関係構築につなげるための工夫をされています。
大林:弊社が提供しているサービスは、弊社へ全てを丸投げする形ではなく、クライアント自身が手を動かして、社内でできるようになって頂くことを非常に大切にしています。その趣旨を理解した上で問合せをして頂いた方が、お互いにとってより良い仕事になるケースが多いんですね。YouTubeでは、動画の最後に無料でダウンロードできるWEB集客ガイドブックをご案内し、そちらに興味がある方々にメルマガを登録して頂くなど、お互いの目的や目線が揃うためのプロセスをあえて挟むようにしています。
一見遠回りのように思いますが、段階を踏んで、会社の強みや考え方をしっかり理解してもらうことが、お互いのミスマッチを回避でき、業務効率や顧客満足度につながるのだといいます。
再生回数に翻弄されない秘訣
⚫︎ 動画のターゲットを明確にする
⚫︎ ターゲットが求めているコンテンツにする
⚫︎ 再生回数ではなくコンバージョンで判断する
半永久的に使える効果的な動画とは
大林さんの動画活用は、YouTubeやWEBサイトなどで公開しているものだけではなく、目的に合わせて使い分けているそうですが、その辺りのお話も教えてください。
大林:WEBでの集客以外で弊社の動画活用の大きなところで言うと、ひとつは士業の方がマーケティングを学ぶ場である会員制のEラーニング「士業の学校」です。リアルのセミナーや講演は、場所、時間、会場のキャパシティなど制約が多くて、人が集まらないリスクもあります。でも、セミナーを動画にしてコンテンツ化すれば全く違う景色が見えてくる。受講者にとっても、時間や場所の制約がないだけでなく、動画なら繰り返し見ることができるので非常に喜ばれています。
有料のコンテンツである「士業の学校」のEラーニング動画は、YouTubeではなくVimeoを活用しているとのこと。
大林:それ以外の動画活用でいうと、反響が良いのは『受付完了動画』です。これは、問合せや資料請求をいただいた方に自動的に届く私の動画で、問合せいただいたことのお礼や、今後の手順などを簡単に説明した短い動画です。信頼感を与えることが目的ですが、お客様の記憶に残るというメリットもあります。この動画は一度作ってしまえば半永久的に使えますから、おすすめです。
大林:また、弊社はホームページ上の「お客様の声」を動画化しているのですが、そちらも一定の効果があります。極端なことを言うと、「お客様の声」の動画は 実際には再生されなくても効果があるのです。どういうことかというと、「お客様の声」の動画がホームページにあるという事実だけで、サイトを訪れた人は「この会社はお客様に信頼されているんだな」という印象を持つんですね。「お客様の声」の大半はテキストで構いませんので、1〜2本だけでも動画にして、目につきやすいところに置いてぜひ活用してみてください。
動画活用の目的と活用の場所によって動画の種類を使い分け、より効果的かつ効率的に活用することが大切だと大林さんはいいます。
大林:もちろんサービスや目的にもよりますが、YouTube におけるビジネス動画の場合、視聴者の興味はコンテンツにあるため、美しい画像や凝った動画でなくても構いません。常に、ビジネスにおける動画活用の目的を見失わないことです。労力・時間・費用をは最小限に抑えながら、見込み客をいかに獲得できるかを常に考えています。
動画活用の適材適所
⚫︎ 動画の目的を明確にして、最適な場所で活用する
⚫︎ 動画の目的や使う場所によって、かける労力・時間を考える
動画活用 まずは「代表挨拶」から
動画をこれから始めるという事業者は、どこからスタートしたら良いでしょうか。
大林:私は常にお客様には「ゴールに近いところから始めてください」と言っています。ビジネスをしている以上、ゴールは契約や受注を頂くことになりますが、「ゴールに近いところ」というのは、顧客からの問合せや資料請求というアクションが起こるところを指します。そこまで辿り着いてくれた方が離脱してしまわないように、まずはそこの確度(コンバージョン率)を上げることが重要です。その中でも、誰でもすぐに始められるのが「代表挨拶」の動画だと思います。そんなに長い必要はなく、最初は1分程度でも良いと思います。どのようなサービスを提供しているのか、どんな思いで経営されているのか、世の中をどんな風にしたいのかを発信してみてください。一度作ってしまえば、ずっと使えます。そして効果を感じられたら、また新たな動画活用にチャレンジしたらどうでしょうか。
元エンタメ業界のプロである「よむどー」編集長 緒方による裏解説動画も公開中!
企業情報:
株式会社ミリオンバリュー
本社:千葉県柏市若柴178-4 柏の葉キャンパス148街区2
公式ホームページ: https://sigyou-school.biz/
士業向けWebマーケティング情報ブログ:https://sigyou-school.biz/pre/
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