おそうじ系YouTuber、本当の収穫は広告収入じゃない?動画活用の真のメリット
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プロによるお掃除テクニックやプロが使用するお掃除“神”アイテムを紹介する主婦に大人気のYouTube チャンネル『おそうじダイアリー』。主婦の「知りたかった」や「困った」を10分強で、分かりやすく解説しています。収益化を目標に始めたYouTubeは、試行錯誤を重ね9ヶ月目に再生回数が急激に伸び、そこから一気に人気YouTuberに。現在は登録チャンネル数17万人、再生回数2,000万回以上に成長した『おそうじダイアリー』。ズバリ、収益性は?ビジネスへの影響は?意外と知らない「ビジネス×YouTube」の知られざる真実に迫ります!
「困った」を解決!おそうじコンテンツが主婦に大ヒット
編集部(以下、−−) 『おそうじダイアリー』は家庭で活用できる簡単お掃除テクニックや便利グッズを紹介する主婦に人気のYouTubeチャンネル。運営する畠中さんの本業は洗濯機分解清掃を中心とした個人宅向けの清掃業です。年間600台近くの洗濯機を綺麗にしている中で、主婦たちの「困った」を熟知している畠中さんは、それをコンテンツにし、10分強の短い動画で紹介しています。
畠中さん(以下、敬称略) 開始直後は洗濯機の分解清掃の様子を動画でアップしていました。モチベーションも高く、かなりの頻度で投稿していたんですが、これが全然見てもらえなくて。自分が発信したい事を動画にしてもダメなんだなと痛感しました。そしてある時、お客様が日常で困っていることにヒントがあるんじゃないかと思ったんです。目に見えない洗濯槽の汚れより、いつも汚れが気になっているけど、なかなか手がつけられない浴室のドアだったり、頑張って掃除しても汚れが取れない水アカや黒カビだったり、「もっと身近な問題の解決方法」に関心があることに気付いたんです。最初は、珍しくて面白いものがウケるのかと思い込んでいましたが、そうではなかったんですね。それに気付くまでは、本当に大変でしたが、あの時のトライアンドエラーがあって今があるのだと思います。
−− 細かなノウハウを動画で提供すると、本業の清掃業に影響はありませんか?
畠中 同業者に「情報を出し過ぎ!」と怒られたこともあります。でも、「もったいつけず、包み隠さず、GIVEの精神で」を徹底し、情報発信することを心がけています。というのも、こんなにも情報が溢れた世の中ですから、私が発信しなければ他の誰かが発信するでしょうし、あまり気にしてはいられません。
−− 視聴者に動画を見てもらうためにはどんな工夫をしていますか?
畠中 私としては、動画に高評価をしてもらい、チャンネル登録をしてほしいわけです。そのためにも、動画を最後まで見てもらわなくてはいけない。この視聴者がどれくらい動画を見続けたかを示す「視聴維持率」が非常に重要です。視聴者が途中で離脱しないために、私は3つの工夫をしています。一つは動画の尺を10分前後にすること。長い動画は再生すらしてくれません。できるだけ短くまとめるようにしています。2つ目は、最初に結論を見せること。例えば、水アカのついた鏡と、掃除した後のピカピカの鏡のビフォーアフターを最初に見せるようにしています。視聴者はせっかちです。結論を見てから、その動画を見続けるかを決めています。3つ目は最後まで見てもらうために、終盤に有益な情報を紹介すること。例えば「100均で買える神アイテム」を終盤に紹介すると、視聴維持率が高くなります。
『おそうじダイアリー』が視聴者に支持される理由
⚫︎ 視聴者の「困った」を解決するコンテンツ
⚫︎ 「もったいつけず、包み隠さず、GIVEの精神」を徹底
⚫︎ 視聴維持率を高く保つ3つの工夫
①尺は10分前後に ②結論を先に見せる ③ 終盤に有益な情報を持ってくる
ビジネスYouTubeの収益と時間労力のバランス
−− そもそもYouTubeを始めたきっかけは何だったのでしょう?
畠中 YouTubeは収益目的で始めたんです。サーフィン仲間がYouTubeを始めて2ヶ月で収益化したことで、勧められたのがきっかけです。2019年9月に『おそうじダイアリー』を開設しましたが、8ヶ月間は鳴かず飛ばずでした。誰も見てくれない状況が続くのは本当に辛いし、心が折れそうになるんですが、なんとか踏ん張って収益化を目指して続けたら、始めて9ヶ月になる頃、急に再生回数が伸びたんです。ちょうどコロナでステイホームを強いられている時で、おそらく家で掃除をする人が増えたんだと思います。何がきっかけで火がつくのか、本当に分からないですよね。
−− 2020年5月に、広告収益化のスタートラインとなるチャンネル登録者数1,000人を突破します。その後、チャンネルを開設して1年後にはなんと10万に達し、現在は登録チャンネル数17万人、再生回数2,000万回以上の人気YouTuberに。見事に当初の目的を達成しました。
畠中 ただ、広告収入だけで考えたら、動画を撮影して編集して投稿する時間労力に見合った収入が得られているかというと、決してそんなことはありません。今、週に1本のペースで動画を配信していますが、私の場合は、1本の動画を投稿するのに6〜8時間はかかりますからね。
−− とはいえ、17万人が登録しているチャンネルで、1年10ヶ月の間に約2,000万回再生されています。YouTube開始前と比べると、収入や働き方に大きな変化があったのではないですか?
畠中 確かにYouTubeを始める前と比べたら、広告収入が入ってくるようになったのは大きな変化です。ですが、トータルの収入で言うと私の場合はそんなに変わらないんですよ。意外に思われるかも知れませんが、動画に割く時間を増やすと本業に充てる時間が少なくなってしまいますし、私の仕事の性質上、そのどちらか一方を急激に伸ばすことは出来ないんですね。
−− 仕事の性質上とは、どういう事なのか具体的に教えていただけますか?
畠中 本業である洗濯機の分解清掃はもちろん、YouTube「おそうじダイアリー」の動画も、ご依頼をいただくお客様のご自宅へ伺うことで成立する仕事がほとんどです。当然ですが洗濯機の分解清掃はお客様の洗濯機でやらないと私の仕事になりませんし、「おそうじダイアリー」の動画に関しても、新たなYouTube動画の素材は、お客様のご自宅に伺うことで初めて手に入るんです。私の自宅は、掃除をやりきってしまって、どこもピカピカでコンテンツになりません(笑)。私一人の会社ですから、1ヶ月で訪問できる件数には限界がありますし、売上が急に倍になるなんてことは物理的に起こりえないわけですよ。
−− 動画の制作も全てお一人でこなしているということですか?
畠中 はい、全て私一人です。掃除風景はクリーニングのご依頼があったお客様の家で、許可をいただいて撮影させてもらっています。それ以外の動画の冒頭と最後の私が話す部分は、社用車の中で撮影しています。問題は編集作業です。私、4歳の娘がいるんですけど、帰宅したら娘につきっきりで、他に一切の作業が出来ません(笑)。なので、編集作業ができるのは仕事の隙間時間だけ。撮影から編集、投稿まで設備はスマホ一台で、社用車がスタジオです。
−− 今後、YouTubeだけに専念する、または配信頻度を上げる予定はありますか?
畠中 それはありませんね。お客様なしでは動画のネタが持ちませんから、動画を作るためには本業でご依頼をいただいたお宅へ伺う必要があります。本業を横に置いて動画のためだけに動くとなると、広告収入には何の保証もありませんので専業にするにはリスクが高すぎます。やはり、本業あってのYouTubeというバランスなんです。私の体はひとつなので、本業とYouTubeの相乗効果が高くなるように私の時間配分を工夫するという形になりますね。つまり私の場合、YouTubeの収益化という点だけで見たら、青天井に伸ばせるような構造ではないということです。しかし、広告収益以外のところで、想定していなかったメリットがいくつもあり、今はYouTubeがビジネスに必要不可欠なツールになっています。
ビジネスYouTubeにおける「時間×労力×収益」の関係
⚫︎ 時間と労力を考えるとYouTubeの収益はそれほど上がらない
⚫︎ ビジネスの性質上、 YouTubeに比重をかけられない
⚫︎ 本業あってのYouTube。相乗効果を狙い、時間効率をあげるのが鍵
⚫︎ それでもYouTubeはビジネスに欠かせないツールである
ビジネスYouTubeメリットは収益にあらず
−− ビジネスYouTubeにおける畠中さんが感じているメリットについて教えてください。
畠中 まず、YouTubeがきっかけで本業の問合せが増えました。数もそうですが、その内訳に大きな変化がありましたね。以前は、外部の集客サイト経由での問合せが100%でしたが、今では40%くらいがYouTubeが集客の入り口になっています。YouTubeで私を知ってくれた人が、Facebook、Twitter、InstagramといったSNSを活用して直接依頼が来るんです。これは利益率の改善に繋がっています。でも、それ以上にYouTubeならではの大きなメリットがありました。私みたいな清掃業はご自宅にお邪魔し作業をしますよね。なので、お客様はどんな人が来るか、少なからず不安だと思うんです。その点、YouTubeの視聴者は私がどんな人間かを事前に知ることができるので、そういった心配がなくなり、むしろ「ハタナカさんが来た!」って喜んでいただけています。撮影のお願いをする時も「むしろ撮って!」と喜ばれることも多く、これは仕事のやりがいという意味でも本当に大きいですね。
−− さらに畠中さんが強調するのは、本業とYouTubeの強力な相乗効果です。
畠中 私の仕事はとにかく「いかに自分の時間効率を上げるか」に尽きます。その点、本業の仕事風景をYouTubeの動画コンテンツにしていますので、一回のお掃除で、お掃除とYouTubeと二つの仕事を同時にできていることになりますよね。かつ、集客もでき、お客様満足度も高くなるので、相乗効果がすごいんです。それに、今回の取材もそうですが、YouTubeをしていなければ会えてなかった人や、いただけなかった機会もたくさんあります。そう考えると、YouTubeのメリットは広告収益ではないんですよね。
ビジネスYouTubeの真のメリット
⚫︎ 集客チャンネルの多様化
⚫︎ YouTube→SNSの経路から直接の問合せが増え利益率が向上
⚫︎ YouTubeを通じて「人柄」や「人間性」を知ってもらえることで、「顧客の心配」を「楽しみ」に変えられた
⚫︎ 本業とYouTubeがお互いに相乗効果をうみ、ビジネスが成長する
⚫︎ YouTubeのおかげで生まれた縁や仕事がある
ビジネスYouTubeで成功するための心構え
−− 畠中さんは、成果が出なかった8ヶ月を耐え続け、実を結びました。動画で成果を上げるための心構えについても教えてください。
畠中 始めるときに「いつ結果が出るかはわからない」ということを理解し、覚悟を持って始めるべきです。上司の方も、早期に結果や費用対効果を求めないであげてください。長期戦だと思って、楽しむことに注力してください。結果が出てない時の周りの声は、非常に危険です。そこで止めてしまうと、動画活用の醍醐味を知らずに終わってしまいます。悪魔のささやきは一切気にしないでください(笑)。YouTubeで成功した人は「続けることができた人たち」ということだと思います。
−− 続けるためのアドバイスもお願いします。
畠中 私はYouTubeを始めるときに、その時のワクワクしている気持ちと目標をノートに書いたんです。当時の目標はチャンネル登録数を、1年後に収益化ラインの1,000人にすることだったのですが、実際には100倍の10万人になっていたんですよね。いま振り返ると、あのノートの存在は非常に大きかったような気がしています。
−− 最後に、これから動画活用を始めようと思っている事業者へメッセージをお願いします。
畠中 ビジネス動画は1秒でも早く始めるべきだと思います。コロナ禍で、直接会う機会が少なくなり、動画による情報発信の必要性は以前にも増して加速しています。企業にHPがあるのが当たり前になったように、情報発信に動画は欠かせない時代がすぐそこまで来ていると思います。時間、設備、費用がない私でも続けられて、結果に結びついているのですから、絶対に大丈夫です!ぜひ、始めて見てください!
ビジネスYouTubeを成功させるために
⚫︎ 「結果が出るまで続ける」と覚悟を決めて始める
⚫︎ 当人も周りも結果を焦らない
⚫︎ 始める前に目標やその時の気持ちをノートに綴る。時折見返し、モチベーションにつなげる
取材者情報:
ハタナカ美掃
YouTubeチャンネル『おそうじダイアリー』
https://www.youtube.com/channel/UCdZRxldXsBBEJ93VX43-Bhg/featured
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