視聴者から絶賛の嵐!元プロ野球選手直伝 野球が上手くなる動画の秘密
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元プロ野球選手が配信する野球上達のための動画が注目を集めています。子どもたち、プロを目指す選手、そして指導者までもが参考になるコンテンツが満載。動画を配信しているのは、兵庫県明石市にある大久保バッティングセンターで店長を務める大原淳也さん。大原さんは、横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)でプレイしていた元プロ。高校野球に始まりアマからプロまであらゆるフィールドでプレーし、多種多様な選手や指導者に接してきた経験をもとに動画を配信。動画を見た視聴者から「自分の子供を見て欲しい」とリクエストが殺到し、オンラインレッスンを開講するまでに。オフラインのレッスンから動画配信、そしてオンラインレッスンまで。成功と課題を取材しました。
人気の理由は「わかりやすさ」
編集部(以下、−−) 大原淳也さんの動画のコメント欄を見ていると、「わかりやすい」「やっと(自分のコーチが)言っていることが理解できた」「子どもの時に聞きたかった」と「わかりやすさ」を評価する声が並びます。
大原さんは、小学3年生から野球をはじめ、高校野球、大学野球、社会人野球、独立リーグを経てプロ野球で2年プレーするなど、多くの選手や指導者と接してきた経験が、この動画に活きています。動画はほぼ毎日更新し、これまでに400本以上の動画を配信しています。
大原さん(以下、敬称略) バッティングから、守備、トレーニング方法など、野球の基本となる知識を10分弱の動画で紹介しています。小中学生を指導している中で、多くの子が持っている癖や傾向などをテーマにし、なぜそうなってしまうのかという理由と解決方法を提示し、最後に効果的な練習方法を紹介するのが主な動画の構成です。撮影と編集は、うちの代表が担当しています。
−− 動画を配信する上で、工夫していることはなんでしょうか。
大原 多くの場合、コーチの言っていることを頭では理解していても、身体で体現することができないんです。それは、子どもたちが悪いのではなく、指導者の伝え方が悪いだけ。少年野球の場合、擬音語や自分の感覚や経験だけで指導する人もいまだに多いのが現状です。誰もが頭でも身体でも理解できるように伝え、技術を習得する手助けをすることが指導者の役目だと思っています。そのために、僕は例え話を入れたり、表現方法を常に工夫しています。
−− 例えば、「バットを振れ」「股関節を入れろ」など、野球をやったことがある人なら、一度は言われたことのある定番のセリフたち。大原さんにかかると表現は全く違います。「バットを振れではなく「バットは引っ張る(引っこ抜く)」。「股関節を入れろ」ではなく「骨盤を立たせる」など。論理的な説明と表現方法に加え、良いパターンも、悪いパターンも視覚的に見せることが理解を深めるために不可欠だと言います。
豊富な野球人生が生んだ第二の野球人生
−− 大原さんの現役時代は、順風満帆とは行きませんでした。しかし、現役時代の苦労や経験が今、指導者として第二の野球人生を支えています。
大原 優れた選手が良い指導者とは限りません。僕が現役の時も、コーチによっていうことはみんな千差万別。プロでさえ、自分に合う指導者を見つけることが難しいんだと思ったことを覚えています。僕の経験上、良い指導者というのは知識があり、かつその人にあった指導ができる人。今は指導者という立場で、いかに分かりやすく伝えて、技術を習得させられるかを、常に模索しています。たくさんの選手や指導者と接した経験が、役に立っています。
−− 動画配信のきっかけはなんだったんですか?
大原 2020年の緊急事態宣言で子どもたちも外に出られなくなりましたよね。野球スクールも中止になって僕も時間ができました。だったら、外で体を動かせない子どもたちのために、家にいながらでもできる練習方法や、野球の基礎知識なんかを動画で配信しようと思ったんです。
−− 動画の反響はいかがでしたか?
大原 動画の再生数や登録チャンネル数が増えるにつれ、バッティングセンターのお客さんも増えました。わざわざ遠くから来られる方もいたり「YouTube見てます!」って声をかけてくれる人もいて嬉しいですね。
−− 視聴者や再生回数を増やすためにはどのようなことが必要でしょうか。
大原 人気のあるジャンルでありながら、オリジナリティのあるコンテンツであることは大切ですよね。例えば、YouTubeで人気だったのは「ホーライスイング」の動画です。「ホーライスイング」は横浜DeNAべースターズの元コーチである蓬莱昭彦さんが説明されている打撃理論。実は僕、横浜ベイスターズ時代に蓬莱コーチから直々に教えてもらったことがあり、「蓬莱コーチ直伝のホーライスイング解説動画」を投稿したら、登録チャンネル数も再生回数もじわじわ伸びていったんです。難しい理論をとにかく分かりやすく解説したことがウケたのかも知れません。
−− 動画のわかりやすさが評判になり、遂にはオンラインレッスンにも発展しましたね。
海外からの受講生も!人気のオンラインレッスンに問題勃発?
大原 自分の子どもを見て欲しいという問い合わせや、具体的な質問が次第に増えていったんです。親御さんも、子どものフォームが悪いのはわかるけど、どう悪いのかをテキストではなかなか説明できません。だったらマンツーマンのオンラインレッスンをやってみようと、昨年の6月にはじめました。
−− 全国から問い合わせが増え、多い時で50件以上に。一時は、アメリカに住んでいる子を2人も教えていたそう。
大原 LINEで申込んで日時を決めたら、あとはズームで指定の時間に繋ぐだけ。特別に準備することもありません。受講生は、自宅の庭やガレージ、近所の公園などで受講しています。時間は25分で3,300円です。その子のバッティングやスローイングなどを僕が見て、アドバイスをします。YouTubeは、幅広いターゲットに対しよくある悩みを解決する動画に対し、オンラインレッスンは、マンツーマンで完全オリジナル。その子のためだけのアドバイスと練習方法を教えています。
−− なぜ25分間なんでしょうか。
大原 以前は50分間だったんですが、それだと、所用時間内に上達しすぎて、満足してしまい、レッスン後に自主練習しないことが判明したんです。それでは全く意味がありません。そこで時間を半分にして、問題点と解決方法を教えたあと、最後に自主練習方法を伝えて、しっかり練習することの大切さを教えています。あまり満足させすぎないことが、子どもたちの上達のカギなんです。
−− 受講生の満足度も高く、リピーターも続出したにも関わらず、オンラインレッスンは一時休止中と聞きました。一体何があったのですか?
大原 バッティングセンターの仕事があり、それ以外に野球スクールや監督業もある中で、オンラインレッスンの問合せも増えて、最後は休みの日に教えるようになり、僕の時間と体力に限界が来てしまったんです。
−− 人×時間×労力は、どの事業者にとっても大きな課題ですね。
大原 でも地理的な制約がなく、世界中と繋がれることは動画やオンラインの強みです。今、オンラインレッスンを改良しているところです。動画を送り合うチャット形式のマンツーマンレッスンを予定しています。つまり、受講生から送られてきた動画を僕がチェックし、問題点と改善方法や練習方法を動画で返信するスタイル。これであれば動画撮影する時間を隙間時間で割けばいいので、決まった時間に拘束されることもありませんし、時間的にも労力的にも負担が軽減します。
−− また、一度に複数人数が参加できるオンラインレッスンも模索中だとか。
大原 複数だと「人のふりみて我がふりなおす」、という利点が受講生にあるはず。僕も、身一つで一度に複数の子を見ることができて一石二鳥。ただ一度にどれだけの子を見られるかは、トライアルが必要ですね
古い野球に変革を!
−− 「今の方が現役時代よりも野球漬け」と笑う大原さんに今後の目標を聞きました。
大原 僕のところに来ている子どもたちの半分以上が、過去に監督が怖くて野球が嫌いになったとか、試合に一度も出られなくて辞めたという子なんです。昔から少年野球の監督って、やたら威張っていたり勝利至上主義な人が多いんですが、そうすると子供たちが委縮して野球が楽しくなくなっちゃいますよね。そして、そのやり方だと下手な子はずっと下手なままになってしまう。現に野球人口は年々減っています。そんな「古い野球」を変え、野球を好きな子や、プロを目指す子を育てたいと思っています。
−− 大原さんの目指す理想の野球指導とは?
大原 僕が小中学生に教える野球は、チームが勝つための野球ではなく、自分がヒーローになるための野球です。だから、送りバントやスクイズは一切しません。「アウトになってもいいからホームラン狙え」って言っています。チームが負けて悔しがるのではなく、ピッチャーだったら打たれたことを悔やみ、エラーしたらエラーした自分を悔やむという自分のプレーに対して目を向けろ、と。小中学生は、褒められて、盛り上げられて育っていきます。勝ち負けにこだわるのは高校野球からで十分です。
−− 最後に、これから動画を活用する事業者へメッセージをお願いします。
大原 動画は遠くにいる人に伝えられる最高の手段です。活用して、世界は広がりました。ただ、「伝えたいことが伝わる」ように、言葉選びや、表現方法は注意してください。そのためにも二人以上の制作体制をお勧めします。一人だと、誤解を生む表現や、失言なんかに気づかない場合がありリスクがありますが、そこに客観的な視点が一人でもあるだけで全く違います。ぜひ、チームで楽しみながら動画を活用していただければと思います。