お客さまは世界。 「街のケーキ屋さん」に学ぶ動画活用

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東京都豊島区にある小さなケーキ屋さん「bilson rollers」(ビルソンローラーズ)」。YouTubeで認知度を上げ、独自の戦略で売上げを伸ばしています。利益率が高くないケーキ販売の活路を動画に見出し、動画活用を起点に複数の収益チャネルを構築。動画の累計再生回数は約9500万回で、動画の広告収益他、リアル店舗やオンライン販売も好調。さらにオンライン製菓スクールを運営する、巧みなビジネス戦略を代表の門傳社長に聞きました。

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門傳 智彦(もんでん・ともひこ)

株式会社 bilson 代表取締役

 

宮城県出身

大学卒業後に上京し金融機関に就職。一年後、情報提供サービス業で起業。その後、広告制作会社も立上げる。オフィスワーク以外の仕事に興味を持ち、甘いもの好きからケーキ屋になることを決意。パティシエ養成の専門学校に行きながら開店準備を始める。2009年10月に「bilson rollers(ビルソンローラーズ)」を豊島区南長崎にオープン。YouTubeチャンネルの登録チャンネル数は32万人で、累計再生回数は9500万回以上。店舗経営の他に、YouTube、インターネット販売やオンラインスクールなど多彩な収益チャネルを展開する。その経験と実績から、現在は飲食店や中小企業の経営コンサルティングも手がけている。

動画再生回数9500万回の「街のケーキ屋さん」

編集部(以下、−−) 「bilson rollers(ビルソンローラーズ)」は西武池袋線椎名町駅から徒歩5分にある街のケーキ屋さん。お店の看板商品であるロールケーキ「ビルソンロール」をはじめ、バスクチーズケーキや半熟カステラ、ハートの誕生日ケーキなどが人気で、地元のお客さんはもちろん、通販も手がけており、国内外にファンがいます。

 

お客さんとお店をつなぐのがYouTube動画。2013年に始めたYouTubeチャンネル『ケーキ屋 ビルソンローラーズ bilsonrollers』は、現在チャンネル登録者数32万人、累計再生回数は約9500万回でもうすぐ1億回に届く勢いです。動画活用のきっかけはなんだったのでしょうか。

 

門傳社長(以下、敬称略) 元々は、パティシエが入社した時に教育用や復習用に動画を作ったのがきっかけです。もちろん対面でもしっかり教えますけど、技を習得する期間は、個人によって大きく違いますし、忙しい現場で「もう一度、教えてください」って先輩のパティシエには聞きにくいこともあると思うんです。教える側も、新しい子が入るたびに同じことを何度も教えるのは大変です。そういう意味でも社員教育用の動画は業務効率アップに効果的でした。最初はその動画をYouTubeに限定公開でアップして、一部を一般に公開していたんです。それをずっと放置していたんですが、気がついたらチャンネル登録者数が3000人くらいになっていたんです。

 

−− それで、本腰を入れてYouTubeに取り組んだんですね。

 

門傳 ケーキ販売は、利益率が高いとは決して言えません。ですから、店舗以外で収益を上げる方法をずっと考えていた中で、YouTubeに本気で取り組もうと決めたのが、5〜6年くらい前です。

 

−− 門傳さんの動画は、ケーキを作る過程を紹介していますが、再生回数が2000万回を超えるものもありますね。

 

門傳 海外の方に見てもらえていることが大きいかもしれません。そのため、日本語での解説は最低限にしています。

密着24時!誕生日ケーキがいつもより多かったケーキ屋さんの1日 「バースデー日和」

−− 動画による効果を教えてください。

 

門傳 動画を見て、店舗に来てくださるお客様は本当に増えました。遠方からわざわざお店に来るためだけに来てくださる方も多いです。視聴者さんは、ケースに並んでいる商品を見る前に、お店の写真を撮ったり、厨房を覗いたりするのですぐに視聴者さんだと分かるんです(笑)。コロナになる前は、韓国やオーストラリアからのお客様もいました。旅行のついでではなく、お店に来ることが来日の目的でとても驚きました。また、Amazonでもケーキを販売しているのですが、通販はYouTube経由でのお客さまも年々増加しているように感じます。ケーキ販売以外に、YouTubeの広告収入もありますので、ケーキを売らずに、収益性を確保できているのは大きいです。

過去の成功法則は通用しない時代に必要なこと

−− 動画を「見てもらうため」に必要なことはなんでしょうか。

 

門傳 今のYouTubeに「絶対」は無いと思います。少し前までは、「成功法則」があったかもしれませんが、ここまでチャンネル数が増え、芸能人などが参入している中では、過去の成功法則はほとんど通用しないと思います。だからこそ、勉強して、いろいろ試してみて、効果があるものをまた改善して良いものにしていく、というやり方しか無いと思います。

 

−− 門傳さんは、どんなことを実践されたのでしょうか。

 

門傳 例えば、料理やお菓子作りの動画の場合、サムネイルは完成した料理やケーキの画像を使うのが王道です。私も以前は完成されたケーキの画像をサムネイルに使っていました。でも、再生回数が伸びなくて、制作過程の画像に変えたんです。そうしたら段々見てくれる人が増えました。これは、「完成されたものより、過程の画像がいい」ということではなく、ビルソンローラーズの視聴者さんが求めていたのは、たまたまこっちだったのだと思います。

 

−− つまり、視聴者が何を求めているか、に応えることが大切なんですね。

 

門傳 はい。大抵のことは、視聴者さんが教えてくれると思います。私に通知される動画のコメントは全て目を通しています。コメントは、視聴者さんが何かを感じた証拠ですから、どんなことにコメントがついたかは大きなヒントになるはずです。例えば、前に「BGMがうるさい」というコメントがあったのでBGMをやめたんです。そうすると「卵の割る音や、落ちる音が気持ちいい」といったコメントをもらうことが増えました。仮にこれが、少数派の意見だったとしても、実は多くの人が感じていたことだったのかもしれませんよね。そういうことを繰り返しテストしては良いものだけを残すという作業を続けてきて今があります。

卵が落ちる音が心地よい「密着24時!ロールケーキ専門店の究極のロールケーキの作り方」

−− 撮影や編集はどのような体制でされているのでしょうか。

 

門傳 パティシエスタッフといつ何を撮ろうということを決めたら、あとはほとんど私一人でやっています。作るものによっては撮影に何日もかかる場合もありますし、その3〜4倍の時間が編集にかかります。とはいえ、はじめから凝った編集をしている訳ではありません。編集の良し悪しは、再生回数とは関係ないと思います。

 

−− では、編集ではなく、どこに力を入れればいいのでしょうか。

 

門傳 もちろん内容は大切ですが、まずはサムネイルやタイトルに力を入れてください。これは再生回数と直結します。例えば私は、「巨大フォレノワールを全部手作りするケーキ屋さんの仕事風景」という動画が2000万回以上再生されています。これは動画のためにわざわざ巨大ケーキを作ったわけではありません。大きなケーキを作って、それを切って販売するのは、ケーキ屋だったら当たり前です。でも視聴者の方にしてみたら、「巨大なケーキ」にびっくりするんですよね。そういう「言葉の力」は鍛えるべきだと思います。

2000万回再生されている「「巨大フォレノワールを全部手作りするケーキ屋さんの仕事風景」

オンラインビジネス成功の極意

−− 「12週間オンライン製菓学校」を2021年からスタートしていますね。これも新たな収益チャネルだと思うのですが、これはどんなサービスなのでしょうか。

 

門傳 現役パティシエから正しいケーキの作り方を教われる12週間のオンラインスクールです。20パート以上のケーキ作りの基本技術を学べます。また、受講中は質問を受付けていて、いただいた質問にパティシエが動画で答えています。金額は9900円(税込)です。

 

−− これは、ライブになるのでしょうか。

 

門傳 いえ、録画動画を毎週配信します。ケーキ作りの工程には様々な科学的な理論が詰まっていますので、ライブより録画動画の方が向いているからです。また、動画は12週間後も半永久的に見ることができるので、復習教材として喜ばれています。

 

−− 動画の特徴を教えてください。

 

門傳 YouTubeの動画に比べると、編集をあまり入れておらず、リアルタイムに近い動画で、解説もかなり細かいものになります。そのため、パティシエの方のスキルアップにも活用いただいています。また、ケーキ屋やカフェを開業したいという方も多いです。開業後に同じレシピを活用いただくこともOKとしていますが、これも珍しいかもしれません。開業相談も無料でお受けしています。

 

−− そこまでのクオリティで9900円(税込)は安すぎませんか?

 

門傳 そうですね。製菓学校に通ったら100万円以上かかってしまうと思うので、破格だと思います。実は今回この価格設定にしたのは、ある理由があるんです。今、多くのパティシエが優良コンテンツを無料で大量放出しています。でも、お金を出して取得した技術と、無料で得た情報では、身につき方が全く変わってきますよね。業界の未来を考えた上でも、布石を打つ必要があると思ったんです。

 

−− なるほど。確かに、無料か有料かで、受講生の覚悟も全く変わったものになりますね。実際に、受講生の反響はいかがでしょうか。

 

門傳 徐々に受講生も増えてきましたし、コンテンツに対する評価も上々です。ライブのスクールではない分、いかにリアルに感じてもらうかを大切にしています。

 

−− それは、パティシエに質問できて、Q&A動画が送られてくるというコミュニケーションのサービスのことでしょうか。

 

門傳 それも一つです。それ以外にも、週に数本、合計60本近いメールが受講中に届くようになっています。もちろんステップメールで仕組み化されているものですが、一人一人のスピードや受講状況を踏まえて設計されているので、とても臨場感があり、帰属感も生まれていると思います。こういった録画動画に「時事ネタ」を入れてしまうと、視聴者に古い印象や、録画感を与えてしまうので気をつけてください。

 

−− 最後に動画活用で成果を上げたい中小企業の皆さんにアドバイスをお願いします。

 

門傳 動画作りは慣れれば上達しますので、まずはいずれ削除するつもりで動画をつくってみましょう。やっていくうちに必ずコツが分かってきます。ですがやらないと「コツ」は一生分かりません。

 

 

 

 

YouTubeチャンネル 「ケーキ屋 ビルソンローラーズ bilsonrollers」

https://www.youtube.com/user/bilsonrollers

 

「12週間オンライン製菓学校」

https://essencebiz.com/bilsoncakeschool/

 

公式ツイッター

https://twitter.com/bilsonrollers1

 

公式インスタグラム

https://www.instagram.com/bilsonrollers/

 

オンラインショップ

https://goo.gl/5mxQKH