「動画」で得た財産/YouTubeが持つ無限の可能性【後編】

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人口2400人の小さな町に、5.8万人とつながっている農チューバーがいます。兼業農家で忙しい中、この4年間ほぼ毎日動画を更新。日誌代わりに始めたYouTubeチャンネル『Harada Farm』が今、若者から高齢者まで高く支持され、動画を通じて数々の出会いやビジネスチャンスが生まれています。会ったこともない誰かを助けたい、応援したいという想いが、動画を通じて実現する。そんな動画の底知れない可能性を「原田農園」代表の原田賢志(はらだ・たかゆき)さんに聞きました。

プロフィール写真

原田賢志(はらだ・たかゆき)
原田農園代表。

広島県東広島市福富町生まれ。
5.8万人のチャンネル登録数を持つ農チューバー。平日は自動車整備会社勤務の兼業農家。近所に道の駅ができた頃に、両親の家庭農園を引き継ぐ形で始めた農業は全て独学。ドローンや最新技術・農機具を用いて生産性の高いカッコいい農業を目指し、YouTubeチャンネル『Harada Farm』を毎日更新。

古い慣例をも変えた動画の力

原田さん(以下、敬称略):これまでの農業は、地域で分断されてきました。どういうことかというと、その土地のやり方を口頭で伝えてきた。でもそれは「代々そうやってきた」だけであって、正しいかどうかは分からない。もっと良い方法があるかもしれないのに「この土地ではそうはやらない」って、変わってこなかった。でも、動画でより良い情報を得ることができるようになったことで、そういった慣例を変えるきっかけになり始めているんです。

 

原田さんが指摘したように、動画の存在は、農業の在り方を大きく変えています。

 

原田:地域関係なく、有益な情報が動画から得られるようになったことで、農業自体が変わろうとしています。僕はYouTubeをきっかけに、農業機械を動画で紹介する仕事をいただくようになりました。その動画を見て、日本全国の農家さんがわざわざ広島の事業者からその機械を購入したりしているのですが、そんなのは少し前までは考えられなかった。

 

『Harada Farm』の登録チャンネル数を始めとする影響力と映像の質が高く評価され、農業機械を扱う事業者からタイアップの依頼がきています。農業機械紹介動画は、原田さんが実際に機械を使いながら、その使用感や使用方法をわかりやすく解説しています。また、ドローンを使って撮影をするなど、プロモーション動画の見応えは抜群。

 

原田:動画を見て分からないことがあれば僕に質問ができますし、視聴者も安心して検討できます。事業者にとっても、これまで県外から農機の発注なんてほとんどなかったわけですから、動画によってビジネスチャンスはかなり拡がったと思います。

 

動画活用は、視聴者も事業者も原田さんもWin-Win-Winな健全な関係を築くだけでなく、業界全体が活性化されるのです。

 

動画の凄さ

⚫︎ 業界の慣例を変える力を持っている

⚫︎ 関連事業者のビジネスの成長にも貢献

タイアップ事例:【畝立整形機 パワー 三郎(さぶろう)】をドローンで空撮したプロモーション動画

「動画」だから出会えた人たち

原田農園には、訪問者が突然くることがあります。

 

原田:急に電話がかかってきて「原田農園を見学させてください」って。びっくりしますよね(笑)。でも、結構頻繁にあるんです。

 

だったら『Harada Farm』のファン同士が集まる機会を作ろうと、原田さんは2018年から年に一度の感謝祭と称してオフ会を企画します。

 

原田:2018年も2019年も全国から約40人がここまで来てくれました。農場を一緒に歩いたり、農作業を一緒にやったり、ドローンを飛ばしたり、農機を体験してもらったり。みんな、リアル『Harada Farm』を楽しんでくれました。

 

YouTubeがなかったら、この人たちはこの小さな町に来ることはなかったはず。YouTubeはネット上の世界だけでなく、リアルな世界をも動かしているのです。

 

そしてまた、農家同士のコミュニケーションにもYouTubeは大きな変革を起こしています。原田さんは、茨城県にある「塚原農園」さんと親交があり、頻繁に情報交換をしているといいます。塚原さんは、登録チャンネル数20万人以上を持つ農チューバー日本一の方です。

 

原田:塚原さんとの出会いも、きっかけはYouTubeなんです。

 

2018年7月に西日本を襲った豪雨で、広島県は甚大なる被害を受けます。その被害額はなんと500億円。原田農園は幸い大きな被害はなかったものの、電気が止まり、毎日欠かさず更新していた動画配信ができなくなります。

 

原田:僕の動画更新がプツリと途絶えたのを心配して、塚原さんが支援物資を送ってくださったんです。一度も直接会ったことのない僕にですよ?他にも心配の声や励ましの声を知らない方からたくさんいただきました。本当に感動しましたし、力をもらいました。

 

塚原さんは東日本大震災のとき、風評被害を受けて辛い思いを経験しました。当時、SNSで全国から寄せられる励ましの言葉に支えられたといいます。だからこそ、困っている人がいたら今度は自分が助けたいと思ったそうです。

 

原田:原田農園は大きな被害はなかったので、いただいた物資は必要としている方にお渡ししました。あの時は、YouTubeの大きな力を感じましたね。

 

その1年後、原田さんは塚原さんに会いに茨城へ行きます。今ではライブ配信を一緒に企画するまでの仲に。農業をもっと楽しくしていく、その同志のような存在だといいます。

 

原田:塚原さんもそうですが、YouTubeによるつながりは、リアルだけだったら生まれていなかったものばかりです。別々の場所で農業をしていても、どこかでつながっている感覚がある。若い農家たちも、不安な時やしんどい時は、YouTubeで助けを求めたらいいと思います。これからますます過疎化すると、地元には農作業を教えてくれる人はいなくなるでしょう。でも、ネット上には助けてくれる、応援してくれる人はたくさんいます。それを活用して欲しいです。

 

これからの動画活用

⚫︎ 情報交換など新しいコミュニケーションの形として動画を活用する

⚫︎ 動画とリアルの場を上手に活用して相乗効果を生む

 

農家仲間との情報交換もYouTubeライブで

突然届いた現金書留

原田さんは、もう一つ信じられないエピソードを聞かせてくれました。

 

原田:ある日、見知らぬ方から現金書留で10万円が届いたんです。同封されていた手紙にはこうありました。

 

「テレビを見て胸が高鳴りました。

私は常に今の国に危機感を覚えています。日本のために、愛のある優しい国になって欲しいのです。

 〜中略〜

種をまけば芽が出ます。良い種を増やして欲しいです。

私の気持ちです。お受け取りいただければと思います」

※手紙の一部です

 

原田:三重県にお住まいのシゲさんという87歳の女性からでした。ただただ驚きましたね。

 

原田さんはこれまで、地域の高齢農家のためにドローンで農薬を散布したり、西日本豪雨で被災した地元を元気付けるためのお祭りを企画したり。また、東日本大震災で放射線被害を受けた福島県本宮市の小学校の菜園作りに協力するなど様々な活動に積極的に取り組んできました。原田さんにカメラが密着したドキュメンタリー番組をシゲさんはテレビで観たのです。

 

原田:とにかくシゲさんに連絡を取ろうとしましたが、封筒にあった電話番号は間違っているし(笑)、YouTubeで呼びかけても返事はなくて。その間、ずっと10万円の使い道を考えてました。

 

シゲさんと連絡を取ろうとYouTubeで呼びかける原田さん

 

その後、ようやく電話がつながって、シゲさんと話すことができたといいます。

 

原田:とても元気でパワフルな方でした(笑)。電話でも、未来に良い種をまいて欲しいっておっしゃってましたね。いただいた10万円は、いつか若い人のために使えたら、と話したら喜んで賛同してくれました。

 

10万円はまだ手をつけず、お守りのようにとってあるそう。この『シゲさんからの10万円』はNHK WORLD JAPANで放映されました。160の国・地域にいる約3億8,000万世帯が視聴できるのですから、また新しい出会いが原田さんを待っているかもしれません。

 

 

最後に、原田さんに動画の必然性や可能性についてお聞きしました。

 

原田:僕はYouTubeをやって本当に良かったと思います。動画を配信していたからこそ、出会いも、新しい仕事も、収入も、新しい学びも生まれました。活用次第では、動画はもっと伸び代があると思っています。何が『アタる』かは誰にもわかりません。だからこそ、小さなスタートを踏み出して欲しいです。好きなものを撮ってみてください。

 

 

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取材者情報:

原田農園:

YouTubeチャンネル『Harada Farm』:

https://www.youtube.com/channel/UCb4JLwc4-LeuTagN2niIdKg