コロナで閉店・事業縮小に陥ったイタリアンレストラン 「動画」に活路を見出し 新たなビジネスチャンスを創造する

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中央区銀座のイタリアンレストラン「ラ・ボッテガイア」。コロナ禍で銀座で営業する3つの店舗の売り上げが急減しました。コロナ収束の見通しが立たない中、オーナーの青池隆明さんは2020年月7末、断腸の思いで2店舗を閉店。残った1店舗で再スタートすると同時に、通販や動画配信にチャレンジ。過酷な現実から目を背けず、新しいことに挑戦し前進する、純粋で潔い経営者が見出した新たな可能性について聞きました。

プロフィール写真

青池隆明(あおいけ・たかあき)

1977年富山県生まれ。

大学卒業後、リクルートに入社。30歳で脱サラし単身イタリアへ。ルッカという小さな街のレストランで1年間修行し帰国。 2010年に株式会社フェリーチェを設立し、中央区銀座に3店舗のイタリアンレストランを経営する。しかし、2020年新型コロナウイルスの影響で、3店舗中2店舗を閉店に追い込まれる。現在、東銀座にイタリアンレストラン「ラ・ボッテガイア」を運営しながら、家庭でも簡単に作れるイタリアンのレシピ動画をYouTubeチャンネル『Aosトラットリア』にて配信中。

同級生との掛け合いが人気の秘密!異色のレシピ動画

編集部(以下、−−) YouTubeチャンネル『Aosトラットリア』は、イタリアンレストラン「ラ・ボッテガイア」を運営する経営者でありソムリエの青池隆明さんが、家庭でもできるイタリアンレシピを紹介する10分程度のレシピ動画。誰でも手に入る食材を使ってできる、シンプルで美味しいレシピには定評があり、登録チャンネル数は開設から約1年で約8万人に。

 

この『Aosトラットリア』の人気の秘密はレシピだけではありません。ちょっと変わった撮影スタイルにあります。『Aosトラットリア』の撮影・編集をしているのが、青池さんの高校の同級生であり、制作会社の代表である安井章浩さんです。コロナ禍で青池さんが困っていることを知り、「YouTubeをやってみないか」と青池さんに声をかけたことが始まりです。この安井さんが、料理をする青池さんに質問を投げかけたりしているのですが、この二人のやりとりが面白いと話題なのです。

 全編富山弁!同級生のやりとりが人気。多くの視聴者がファンに

青池さん(以下、敬称略) チャンネル開設当初は、僕の手元を映してレシピを紹介する一般的なレシピ動画だったんです。でも、淡々と一人で作業して、一人でしゃべるって、とても難しいんですよね。それですぐに僕も安井も飽きちゃって(笑)。何より僕たちが楽しめないと続かないので、色々と試行錯誤をした結果、今のスタイルになりました。画質や音質はものすごく綺麗ですが、洗練されたかっこいいレシピ動画というより、気のおけない男友達が言いたいこと言いながら料理をして、少しの学びと笑いありの、見ている人が楽しめるような、そんな動画です。安井が言いたいことを喋るので、たまにコメント欄が荒れますが(笑)、自分たちが楽しんでいることが自然と視聴者に伝わって、「今の方がテンポ良くて好き」、とか「青池さんが楽しそう」とか好意的な意見の方が多いです。とはいえ、安井もプロなので、視聴者の方が気になることを先回りして質問してくれたり、常に視聴者目線で動画制作をしてくれています。僕へのしゃべりの指導もかなり厳しいです(笑)。

 

−− 青池さんと安井さんは、それぞれどんな役割なのでしょうか。

 

青池 僕はレシピを考えて、安井は撮影と編集ですね。安井の会社のオフィスにあるキッチンで撮影しています。1本の動画に対して、撮影は1時間半くらい。そこから編集して10分前後の動画に仕上げてくれています。

 

−− 人気チャンネルになるまでは大変だったそうですね。

 

青池 そうですね。本当に試行錯誤の連続でした。(チャンネル登録数が)500人以下の状態が数ヶ月続いたんですが、ちょうど事業の継続か撤退か悩んでいる時と重なっていたので、まさに暗黒の時代でした。動画をアップしながらも、「自分はこんなことをやっていて何か意味があるんだろうか?」と思う瞬間が沢山ありました。そんな中、7月末に2店舗を閉めるという苦渋の決断をして、ようやく新しい生活に慣れてきた2020年11月に、今回のコロナ禍での体験を安井がドキュメンタリー映像にしてくれたんです。その動画が思いがけずバズりまして、そこからチャンネル登録者数と再生回数がグッと伸び始めましたね。

【コロナで閉店】無念の心のうち全て話します。銀座の飲食店の苦悩【 前編 】
【コロナで閉店】無念の心のうち全て話します。銀座の飲食店の実情【 後編 】

−− 青池さんが銀座で10年間頑張ってきたお店を閉めるに至った経緯や青池さんの心境。解雇せざるを得なかった従業員への想い。そして、他の飲食店さんも含めた銀座の状況や、そこに関わる多くの事業者さんが直面している現実をリアルに伝えた動画です。

 

青池 実は、7月初旬に閉店することの経緯や心境をnoteでも書き残していたんです。安井からは「すぐに映像化しよう」という話ももらったんですけど、当時は、カメラの前で話せるような精神状態ではなくて…。結局あのタイミングになりました。でも、動画で赤裸々に語ったところ、日本全国から励ましや応援の言葉をいただいて、本当に嬉しかったですね。

 

−− 文章と動画とどんな反響の違いがありましたか?

 

青池 どちらもかなりの反響がありました。文章を読む人と、動画を見る人では層が違うと思うので、両方やってよかったと思います。ただ、動画は僕の表情だったり、お店の内装だったりで、よりリアルに伝わったかもしれませんね。あと、インタビュアーである安井が感極まって泣いちゃう場面があるんですけど、そのインパクトが強烈だったんだと思います。映像のプロであることより、同級生である安井の方が勝ったんでしょうね。本当にありがたかったです。

 

異色のレシピ動画 成功の秘訣

⚫︎ 「誰でも手に入る食材」にこだわった

⚫︎  シンプルかつ美味しいイタリアンレシピに特化

⚫︎ 掛け合いで、青池さんの親しみやすさや、安井さんの面白さが視聴者に伝わった

⚫︎ 青池さんのドキュメンタリー映像が多くの人に届き、支援者やファンが増加した

物販で実感した動画の凄さ

−− チャンネル開設から1年が経ちましたが、ビジネスへの影響はいかがですか?

 

青池 「動画をいつも見ています」という方にご来店いただくことが本当に増えました。動画を見てくださる効果で、皆さんにとって僕は初対面じゃないんですよね。「レシピ作りました!」とか「こういう場合はどうしたらいいか」とか動画の質問をいただくことも多いです。コロナ前は、友人やご家族と美味しいご飯やワインを楽しむことがご来店の目的だったと思うんですが、今は、それに加えて、私と会って話が出来ることも ちょっとしたエンターテイメントになっているようで、これは動画をやっていなかったら生まれていなかった現象だと思います。

 

−− 顧客層に変化はありますか?

 

青池 そうですね。コロナで席数を半減し、単価を上げたことで、以前のような“フラッと立ち寄る店”では無くなりました。今後は、コロナが落ち着いた後も含め、“わざわざ足を運びたいと思ってもらえる店”にしていかなくてはいけないし、そのためには動画の活用が欠かせないと感じています。先日も、動画を見てくださった方が、北海道から来たとおっしゃっていて。もちろん、このお店に来るためにわざわざ北海道から来たわけではありませんが、「どうせ東京行くなら、あのお店行ってみたいね」と思い出してもらったと思うと嬉しくて仕方ありませんでした。この方みたいに、日本各地からお客様が来てくれることを期待しています。本当に楽しみです。

 

−− 青池さんにとって、動画の一番の強みはなんだと思われますか?

 

青池 お客様にダイレクトにメッセージを届けられるという点だと思います。先日、ワイン講座を生配信したんです。何百人という方が見てくださって、その数時間でワインセットや新メニューのラザニアが何十セットも売れたんです。動画はストーリーでモノが売ることができると確信しました。ものすごい可能性を秘めていると思います。

 

−− モノがストーリーで売れるとはどういうことでしょうか

 

青池 例えば、ワインだったら、味だけではなく、生産者さんの話やそのワインに合う料理など、楽しみ方を伝えるようにしています。私たちソムリエは、ワインをセレクトするだけでなく、そういったストーリーを提供するのも重要な役割だと思います。そして、それはワインだけじゃなくて、他の食材や調味料についても大切にしていることですね。僕は動画の中で、決まったオリーブオイルや塩を使っていますが、これが本当に美味しいんです。自分が心から惚れ込んだオリーブオイルや塩ですから、お勧めする理由やどんな料理に合うかをちゃんとお伝えしたくなりますよね。どちらもお値段は高い商品ですが、沢山の方にお求めいただいてます。塩は現在欠品中です(7月末現在)インポーター(輸入業者)さんもコロナで大変な状況が続いているので、とても喜んでもらっています。

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−− レシピ本も第3弾が出版されましたね。売れ行きはいかがですか?

 

青池 おかげさまで順調です。当初は紙で出したかったのですが、製作コストが高くて、本の定価も上がってしまうという理由から、電子書籍で刊行しました。蓋を開けてみたら、これがとても便利で。動画からのレシピ本の動線もすごくスムーズですし、レシピ本から動画が掲載されているウェブページに行けたり、カート機能で直接アマゾンに飛んで買い物ができたり。何より本の在庫も持たなくて良いですから、リスクもありません。Amazonに置いてあるだけで、毎日20部ずつくらい売れています。

 

−− 毎日20部とはすごいですね!

 

青池 はい。今後もレシピ本は出していきたいですし、調理道具なんかも挑戦したいと思っています。料理の楽しさや美味しさをストーリーで届けられたらと思っています。

動画活用の強み

⚫︎ 動画を見た人が、お店に来てくれる

⚫︎ 顧客にとって外食が「エンターテイメント」になる

⚫︎  商圏が銀座界隈から全国へ

⚫︎ 情報をダイレクトに届けることができる

⚫︎ モノはストーリーで売れる

動画は価値ある投資。必要なのは覚悟と勇気

−− これから動画活用を始めたいと思っている事業者さんにメッセージをお願いします。

 

青池 僕の場合は、安井が声をかけてくれなかったら動画に出会うことはなかったと思います。コロナじゃなく、3店舗経営する中では、動画に回す時間も余力も以前はありませんでしたから。ですが、今、こういう状況になって、動画を活用して本当に良かったと思います。始めた当初は闇雲で、ゴールも可能性も全く見えていませんでした。でも、安井が「まずは動画を100本作ろう。そこがスタートラインだ」って言ったんです。今は、安井の言葉の意味もわかるし、動画の力や可能性を感じることができています。先程もお話したように、動画はダイレクトにメッセージを届けることが出来るツールです。おかげさまで、私はYouTubeだけでも約8万人もの方々に直接自分の思いを伝えることができるようになりましたが、これは動画を活用していなかったら間違いなく実現できていないと思います。有名人でなくても、誰でもそれが出来る時代です。やらない手はありません。事業者である以上、発信するツールを持つべきだと思います。うまくいけば、広告投資からの脱却も可能ですから、非常に価値ある投資だと思います。

 

−− 青池さんも苦しい時期があった中で、結果が出るまで続けられたのは、なぜでしょうか。

 

青池 僕一人では到底続けられませんでした。安井にビシバシ鍛えられたからこそ続けられたのだと思います(笑)。社内でも社外でもいいので、信頼できるパートナーを見つけたら、始める勇気と続ける覚悟を持ってください。それだけだと思います。

 

−− 青池さんの今後の展望も教えてください。

 

青池 実は商圏を世界に向けています。コンテンツを英語にするだけで、商圏は信じられないくらい広くなります。レシピ本も英語版ができましたし、英語のチャンネルも動き始めています。今は今後どんな展開になるか全く予想できませんが、仲間を増やして、楽しいことにこれからもチャレンジしたいと思います。

動画活用を始める際に必要なこと

⚫︎ 一人では心が折れる!信頼できるパートナーを見つけよう

⚫︎  始める勇気と続ける覚悟を持とう

⚫︎ 価値ある投資をしよう

 

 

 

取材社情報

株式会社フェリーチェ

 

ラ・ボッテガイア 公式

https://www.da-felice.com/bottegaia/

 

〒104-0061 東京都中央区銀座3-12-15 銀座細谷ビル1F

定休日:日曜日月曜日

カード:使用可(VISA/Master/JCB/AMEX/Diners)

東銀座駅3出口徒歩3分・銀座駅A7番出口徒歩6分

 

 

オンラインショップ

https://feliceinc.base.ec/

 

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