生放送4000回、元NHKキャスター直伝 !オンラインで「伝わる」極意

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コロナ禍で急速に進むオンラインでの会議や商談。コミュニケーションやビジネスの在り方の変化に戸惑う人も多いのではないでしょうか。オンラインや動画でのコミュニケーションを円滑にし、かつ成果につなげるための極意を元NHKキャスターであり、動画スピーチコンサルタントの重信香織さんに聞きました。また、今回特別に限定公開の動画を記事の中で紹介する許可をいただきました。すぐに実践できるノウハウ満載です。こちらもお役立てください。

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重信香織(しげのぶ・かおり)

動画スピーチコンサルタント

 

大学卒業後、NHK鹿児島放送局にキャスターとして採用され、キャスター兼ディレクターとして制作業務も兼務し、企画から取材、台本作成、出演まで担当。その後フリーキャスターに転身する。キャスターオーディション合格率は100%を誇り、生放送は4,000回以上の実績がある。結婚・出産を機に第一線から退き、専業主婦として15年間子育てに専念するも、2019年に独立。セミナーコンテスト2020年大会では、地方予選を勝ち抜き、全国3位入賞。10年間のキャスターとしての経験、1,500人を超える対談や取材を通して培ったコミュニケーション力を武器に、単なる話し方ではなくコーチングを使ったヒアリングで、本質的な課題と解決策を提示しコミュニケーションの本質にアプローチする手法には定評がある。「話す力で夢を叶える人を応援する!」をミッションに、動画やオンラインをビジネスに活用したい企業や個人起業家を対象に動画スピーチコンサルタントとして活躍中。

対面とオンラインコミュニケーションの決定的な違いとは

対面でのコミュニケーションに慣れている人にとって、急速に進むオンラインの世界はなかなか慣れないものです。顧客へのPRのための動画活用の必要性も増します。ただ、

 

「必要なのは分かっているけど、重い腰があがらない」

「画面越しのコミュニケーションに苦労している」

「とにかく何から始めて良いか、何を発信していいかわからない」

 

との声が聞こえてきそうです。動画スピーチコンサルタントの重信香織さんに、オンラインコミュニケーションや動画撮影における「伝わる」技術についてお聞きしました。

 

編集部(以下、−−) 重信さんは大学卒業後にNHK鹿児島放送局でキャスターとなり、その後フリーキャスターに。キャスター歴10年のキャリアをお持ちで、4,000回以上の生放送と1,500人を超える対談や取材を通して得られた経験を基に、現在は動画スピーチコンサルタントとして活躍されています。今、多くの人がオンラインコミュニケーションで苦労するのは何故でしょうか。

 

重信さん(以下、敬称略) そもそもリアルとオンラインコミュニケーションでは決定的な違いがあります。リアルな場でのコミュニケーションは、時間の経過とともに「信頼」が醸成されます。セミナーのような1対複数のコミュニケーションでも、1対1のコミュニケーションでも同じです。そこに「場」があることで、時間とともに一体感が生まれるんですね。でもオンラインによる画面越しのコミュニケーションの場合は真逆なんです。つまり、時間の経過とともに、集中力がどんどん低下して、信頼感を形成することが非常に難しくなっていきます

 

−− ということは、集中や信頼のピークは冒頭ということですか?

 

重信 その通りです。オンラインや動画では、最初の印象が本当に大事です。そこで少しでも違和感があるとすぐに消されてしまうというリスクもあります。

 

−− リアルだと、その場から逃げるわけにはいきませんが、オンラインはそれができるのが怖いところですね。

 

重信 リアルとオンラインコミュニケーションの違いを証明するかのようなエピソードがあるのでちょっとご紹介しますね。自身の体験をもとにセミナーを作り、それを10分間のスピーチで発表し順位を競いあう「セミナーコンテスト」をご存知でしょうか。2007年から始まって2020年大会まではリアルで開催され、2021年大会はコロナ禍でオンライン開催となりました。発表の順番はくじ引きで決めるのですが、リアルで開催されていた2020年大会までは、一番くじを引いた発表者は優勝できないというジンクスがありました。しかし、2021年大会がオンライン開催になった途端、一番くじを引いた発表者がいくつもの地方大会で優勝したんです!

 

−− オンラインだと集中力を保つのが難しいことがわかりますね。

 

重信 それに加え、リアルの場合は「場」や「空気感」といった5感で共有できることがたくさんあり、それが一体感を生み、コミュニケーションをサポートしてくれる何よりの武器になるんです。でも、オンラインの場合、提供できる情報は視覚と聴覚のみです。ですから、最初に「この人の話が聞きたい」と思ってもらう必要が、リアル以上にあるんです。

リアルのコミュニケーションとオンラインコミュニケーションの違い
・ リアルでのコミュニケーションは、時間の経過とともに「信頼」が醸成される
・ 同じ「場」で5感を共有することで一体感が生まれる
・ オンラインコミュニケーションは時間の経過とともに、集中力がどんどん低下する
・ さらに、時間の経過とともに信頼感を形成することが難しくなる
専門家として信頼される映り方3つの法則

合格率100%!「第一印象」を決めるマインドセット

−− 重信さんはキャスターオーディションの合格率が100%と聞きました。面接やオーディションはまさに「最初の印象」が重要です。重信さんはどのような準備をしてオーディションにのぞみ、合格をつかみ続けてきたのでしょうか。

 

重信 キャスターオーディションは、基本的に3つの構成です。最初に自己PR、その後セットに移動して、ニュース原稿を読んだり、出されたお題についてフリートークをしたりします。最後に質疑応答で終わりです。審査員は別の部屋にいて、モニターに映る応募者を審査しています

 

−− なるほど。リアルではなく、オンラインコミュニケーションと同じなのですね。

 

重信 私は決して、原稿を読むことが特別優れているわけではありません。ただ、オーディションだけでなく、キャスター時代に常に意識していたことがあります。それは、番組を制作しているスタッフが「どんな視聴者に何を届けたい人たちなのか」を考えるということ。これを明確にすることでマインドセットでき、伝え方が変わるんです。

 

−− 番組制作陣の目的を理解し、その上で、重信さん自身が視聴者に向けてマインドセットをすることが合格の秘訣なんですね。

 

重信 合格した後、番組を一緒に作っている時に、制作のスタッフさん達から「オーディションで重信さんの第一声を聞いたときに、『あ、この子になるな』って思ったんだよね」と何人もの人に言われました。人は、パッと映った時の印象で無意識に判断しているんですよね。それは、オンラインコミュニケーションでも同じことが言えるんです。もちろん、見た目や話す内容も大切ですが、言語化にも視覚化にも繋がる「マインドセット」が、とても重要なんです。

第一印象を決めるマインドセットの作り方

・ 「どんな視聴者に何を届けたい人のか」をトコトン考える
・ その視聴者にとって、最適な自分や伝え方を工夫する
人前で話すのが苦手な人でもカメラの前で緊張せずに話せる!3つの秘訣

動画やオンラインでは「伝え」ても「伝わらない」

−− この「マインドセット」は誰にでもできることなんでしょうか。

 

重信 もちろんです!大切なのは「伝わる」ことを意識することです。

 

−− 「伝える」ではなく「伝わる」なんですね。

 

重信 「伝える」は主語が自分。つまり自分にベクトル(矢印)が向いていますよね。多くの人が、自分が伝えたいことを、論理的に、わかりやすく伝えることに一生懸命になりがちです。でも、それでは相手に伝わらないことがほとんどです。どう言えば相手に伝わるか、常に主語は「YOU」で考えてください。

 

−− 常に相手目線であることが必要なんですね。

 

重信 それを意識するだけで、相手に「伝わる」印象が変わります。例えば、視覚情報も同じです。相手に信頼されるために、自分の中のどの要素を引き立てれば良いか考える必要があります。髪型や服装、色のチョイスやメイクなど、相手はその情報で瞬時にあなたの印象を作りますから。話す内容も同様です。「伝えなきゃ!」と思っている時は、早口で相手に「間」も与えず、一文がすごく長くなりがちです。でも相手目線で「理解されているかな?」「伝わっているかな?」と意識すると全く違うものに変わっていくはずです。

 

−− 自分のことを客観的に見て、プロデュースするのはとても難しいと思いますが、何か方法はありますか?

 

重信 そこはやはり信頼できる他者の力を借りることだと思います。企業であれば、チームや同僚に相談してください。個人事業主の場合は、ご家族やご友人などでもいいので、あなたの良いところを引き出してくれる方と楽しくディスカッションしてはどうでしょう。

「伝わる」極意

・ どう言えば相手に伝わるか、常に主語は「YOU」で考える
・ 相手があってのセルフルプロデュースを心がける
・ 相手のことを考えると、話すスピードや間の取り方なども自然と変わってくる

オンラインコミュニケーションに必要な5つの要素

−− マインドセットができたら、あとはどのような準備が必要でしょうか。

 

重信 私の場合は、動画に必要な5つの要素をヒアリングすることから始めます。相手に最後まで見てもらえて、伝わる動画にするには、この5つを掘り下げて準備していく作業が欠かせません。それでは順番にいきましょう。

 

一つ目は、「誰が伝えているのか」を明確にすること。あなたが何の専門家なのか、あなたが何者なのかを一言で表現してください。

 

二つ目の要素は、「誰に伝えるか」。聞き手はどんな課題を抱えているのか。どんな未来を望んでいる人なのかを具体的に言語化してください。

 

三つ目は、相手にとってあなたが「何を提供し、何を解決するのか」を提示すること。

 

四つ目がとても重要です。あなたはそれを「何のために伝えるのか」。この「WHY」の部分を掘り下げてみてください。ここにあなたが本当に伝えたいこと、やりたいことである「コアメッセージ」が眠っています。

 

最後は「どんな風に伝えるか」を考えましょう。先程のセルフプロデュースもここになりますね。

 

−− これらを基に構成台本を作っていくと言うことですね。

 

重信 はい、構成台本というか、簡単な構成で大丈夫です。台本をしっかり作り込みすぎると、みなさんそれを丸暗記してしまいます。それだけは絶対にNG!台本丸暗記は、情報を「音」にして届けているに過ぎず、肝心のメッセージは決して届きません大切なのは言葉を通して「想い」を伝えることです。自分の言葉で伝えることを大切にしてください。

超簡単だけど 効果抜群!想いが伝わる自己紹介&商品紹介シナリオ構成の作り方

−− 最後にこれから動画やオンラインをビジネスで活用したいと思っている事業者へメッセージをお願いします。

 

重信 キャスター時代、発信し認知してもらうことで、たくさんのチャンスと学びをもらいました。今は個人がメディアを持てる時代です。そんな素晴らしい武器を使わない手はありません。まだ始めていない方は、ぜひ最初の一歩を踏み出していただければと思います。

 

私は15年間専業主婦をしていたので、起業する時は怖さも感じました。でも、自分の中にある想いを言葉にして、家族や友達に伝えることから始めました。伝えてみると、いろんな人に気づいてもらえて、たくさんのご縁に繋がりました。今は、ライブ配信や動画など、さまざまなメディアを活用できます。自分の経験や想いを発信することで、共感、共鳴という和が広がります。だからこそ、自分のコアメッセージをしっかり見つけて、それを発信してください。必ず同じ志を持った仲間や同士が見つかるはずです。

動画を撮る前に必要な5ステップ

  1. 「誰が伝えているのか」を明確にする

  2. 「誰に伝えるか」を明確にする

  3. あなたが「何を提供し、何を解決するのか」を明確にする

  4. 「何のために伝えるのか」を考えるコアメッセージを見つける

  5. 「どんな風に伝えるか」を考える

重信香織事務所

https://kaori-shigenobu.com/

 

重信香織の動画プロデュース体験会

https://shigenobu-kaori.com/taikenkai