映像で社員が育つ理由 活用の極意、教えます 連載Vol.1 「感じる力」が社員成長のカギ〜
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2021年9月に公開した記事『映像プロデューサーに聞く!中小企業の新たな価値を発掘する動画制作の極意と技法』では、「これまでにない動画に対する新しいアプローチで参考になった」と多くの反響が寄せられました。特に記事の中の「映像制作が従業員のパフォーマンスを上げるツールである」ことに関して「もっと詳しく学びたい」という声を多数もらったことを受け、今回の連載企画が実現しました。連載では、コミュニケーション能力や自己肯定感の質が飛躍的に向上する「映像言語」を活用した映像制作手法について、榎田竜路さんに詳しく教えてもらいます。
連載第一回目のテーマは「社員の成長と映像制作の関係性」について。
実は、榎田さんは中小企業のコミュニケーション研修を数多く請け負ってきた実績があります。榎田さんは、「映像言語こそ、社員のコミュニケーション能力を飛躍的に上げるツールであり、映像と社員の成長は親和性が高い」と言います。
そもそも、どのように映像とコミュニケーションは関連し、それが社員の成長につながるのでしょうか。今回の連載は、榎田流コミュニケーション理論からスタートします。中小企業が今、直面している課題や求められている能力について、映像プロデューサーによる新しい視点から紐解きます。
コミュニケーション能力アップの最強ツール「映像言語」とは
こんにちは。アースボイスプロジェクトの榎田竜路です。
この連載では、『社員の能力が飛躍的に上がる映像言語の活用術』と題して、私の経験と技を読者の皆さんにお届けできればと思っています。
私は、私が独自に開発した「企業の中に新しい関係性を見出し価値化する『認知開発®手法』」の普及を目指し、全国の中小企業や地方自治体で講座を開催しています。講座の受講後に受講生がどうなるかというと、自己肯定感の質が上がり、コミュニケーション能力が飛躍的に上がるんです。もちろん会社の業績も上がりますし、人も辞めないどころか採用にも苦労しなくなる。こんな夢のようなことが全国で起こっています。
なぜ、このようなことが起こるのか、どうしたら御社にも同じことが起こるのかを、できるだけわかりやすく伝えられたらと思います。
これまで何千社という企業とお付き合いしてきた中で、多くの人が勘違いしていることがあります。それは、映像をアウトプットのツールだと思い込んでいることです。この勘違いから、アウトプットの能力を上げようと頑張っている人も少なくありません。もちろん、デザインといった見せ方や、話し方といった伝え方は大事ですが、忘れてはいけないのはその「入り口」です。つまり、映像もコミュニケーションも、インプットが非常に重要だということです。そして、「映像言語」ほど、インプットに気づく機会を与えてくれるものは他にありません。
「映像言語」は、聞き慣れない言葉だと思いますので、ここで少し説明させてください。
映像を制作するためには、3つの言語が必要です。それは、音声言語、画像言語、文字言語です。これらの情報を組み合わせることで、一つの映像が出来上がるわけですが、通常、音声・画像・文字を処理する際、脳の中では3つの別々の場所で、別々に情報が処理されると言われています。しかし、映像を制作するという作業は、この3つの言語を、同時に処理する能力が必要です。脳の違う場所で処理されている3つの言語を、同時に使う人類史上初の言語のことを、私は「映像言語」と呼んでいます。“もの凄い高度な脳トレ”と思ってもらえたらいいかもしれません。
コミュニケーションの本質は、情報を整理し、仮説を立てて編集し、伝達することです。映像言語を扱う時もこの本質は変わりません。ただ映像言語の場合、情報量が膨大な上に、組み合わせが無限にあるので、大変な作業であることは容易に想像できると思います。ですがここで培われたコミュニケーション力こそ、企業の稼ぐ力の源泉だということを強調しておきます。つまり、映像言語を理解し、このコミュニケーション力を上げれば、企業の稼ぐ力は自ずと高まるのです。
社員が成長するための3つの力
では、「コミュニケーション力」=「稼ぐ力」を企業が養うために、社員が必要な能力とはなんでしょうか。私は企業の社長に「社員のどんな能力をあげたいんですか?」と必ず聞きますが、明確に答えられる社長は非常に少ないです。私が考える社員のコミュニケーション力を引き上げるのに欠かせない3つの力をご紹介します。
下図の通り、人が成長するためには「感じる力」、「考える力」、「行動力」の3つを養うことが社員の成長の要です。いうまでもなく、映像言語を活用することで、この3つを同時に育てることができます。
ここで大切なのは、「感じる力」が養われないと「考える力」は育たないということです。もちろん「感じる力」と「考える力」なくしては、行動には移せません。「感じる力」を育てずに「考える力」ばかりを育成しようとする企業が多いのです。言うだけで社員が勝手に変化し成長するなら誰も苦労しませんよね。
2002年にノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン博士は、人間には二つの判断システムがあると言っています。これは二重システム理論(二重過程理論ともいいます)と呼ばれているものですが、一つは直感的な判断力で、もう一つは論理的な判断力です。この二重システム理論を私なりに図解してみましたのでご覧ください。
上図のように、人間は2つのシステムで構成されています。三角形の上の方にあるSystem2は言語や論理的思考を司っています。その下にあるSystem1は、感情や感覚といった非言語を司っています。
人は何かを知覚するとまずは直感的な判断が行われ、それを元に推論し(考え)て、行動につながると言われています。しかし、実際は、9割以上が「直感→行動」という流れをとり、「直感→推論→行動」という流れをとるのは1割以下と言われています。
基本的に人間はSystem1だけで、生きていると言っても過言ではありません。そして推論が行われるにしても、直感のフィルターを通ったものしか推論できないので、知識を蓄え、思考力を磨いたとしても大きな成長は期待できないと思います。
例えば、世の中には「考え方」についての書籍や勉強会がたくさんあります。その情報に触れたはずなのに、その「考え方」が定着しなかった経験・・・あなたには、ありませんか?
わかりやすいのは、ダイエットや禁煙などでしょうか。頭の中では、「摂取カロリーを少なくする」とか「健康に悪いからタバコはやめるべき」と、分かってはいてもそれを継続できず、結果に結びつかないというのはよくある話です。大切なのは、「考え方」だけでなく、「感じ方」を育てることなのです。
また、「考え方」の話をすると、「弊社の社員は皆、プラス思考です!」と言う社長も少なくありませんが、私はこの「ポジティブシンキング神話」は限界があると思っています。なぜなら前向きに考えて不幸になっていく人たちを、目の前でたくさん見てきたからです。特にビジネスをする上では、「この案件はスケジュールがタイトで嫌な予感がする」とか「これはリスクが高いな」など、プラスだけでなく、マイナスの要素を察知したり、感じることはとても重要ですよね。そこから生まれてくる「しっかり準備しよう」とか「事前に策を練っておこう」といった「前向きなものを感じ取れる能力」がビジネスにも、人生にも必要不可欠です。では、単に前向きに考えるのではなく、「前向きなものを感じ取れる能力」を社員に身につけさせるにはどうしたら良いのでしょうか。
「感じる力」と「考える力」を同時に育てられる唯一の手法
今回の連載は、この「感じる力」と「考える力」を同時に、育てていく「技」についてお伝えしていくことが主題となります。
私が企業や自治体におこなっていることは、まさにこれです。取材・整理・編集・伝達という4つの過程で100秒程度の映像を制作しながら、無意識の領域にできている「感じ方」に影響を与え、「考え方」と「行動」を変容させる研修です。
スポーツの世界に例えると分かりやすいかもしれません。野球でもなんでも、論理的に説明しただけでは野球は上手くなりませんよね。必ず「練習(私は「稽古」と呼びます)」によって無意識に身体が動くようになっていきます。ビジネスも一緒です。「型」を用いて稽古することで、「感じ方」を変え、その結果として「考える力」が飛躍的に上がります。
知識を活かすのも、感情を制御するのも、感覚が働くからです。感覚を無視している状態では、論理的思考は働きません。
この「考える力」と「感じ方」を同時に育めるビジネス研修を私は他に知りませんし、社員の成長を目的にして、映像制作を手段にしている映像制作会社も、他にないかと思います。
ぜひ、この機会に新しいアプローチで映像言語に触れ、社員やご自身の成長につなげてもらえればと思います。
次回は、具体的に「思考」と「感覚」を活性化させる取材の極意をご紹介します。
お楽しみに。
Earth Voice Project(アースボイスプロジェクト)