日本初オンラインバスツアーが大ヒット!「新しい観光」を生み出した成功の秘訣【始動編】

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香川県仲多度郡琴平町(カガワケン ナカタドグン コトヒラチョウ)に本社を置く琴平バスは、2020年4月の緊急事態宣言の影響で3月、4月の売上はゼロに。苦肉の策として思いついたのが「オンラインのバスツアー」。21年5月末までに延べ2000人以上が参加する大ヒット商品に。前編となる今回は、コトバスオンラインバスツアー誕生秘話、ツアー作りにおけるこだわりについて、立案者でありツアーの添乗も務めるコトバスグループ 執行役員の山本紗希さんにお話を聞きました。

プロフィール写真

山本紗希(やまもと・さき)
大阪生まれ、大阪育ち。
甲南大学 経済学部卒業後、琴平バスに入社。入社後、コトバスツアーチームに所属し、プランナーとして企画・添乗に従事。結婚で関西に戻ったのを機にリモートワークに。現在は、コトバスオンライツアーの企画・運営の他、WEBの更新を中心に、バスの営業・商談会、インバウンド事業、新規事業の立ち上げや採用などに関わっている。

全ツアー中止の中、「会えなくてもつながれるサービス」を

「2020年3月4月はコロナでツアーは全滅。仕事がなくて、暇だったんです」

 

笑顔で話すのは、コトバスオンラインバスツアーの立役者、山本さん。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で私たちの生活が一変する中、2020年4月16日に出された緊急事態宣言によって、多くの事業者が休業・廃業の決断を迫られました。特に観光業界は、ほぼすべてのビジネスの機会を突然奪われ、影響が大きかった業界の一つです。

 

山本さん(以下、敬称略):月30〜40本開催していたバスツアーがコロナで全て中止になり、もちろん売上はゼロに。でも感染リスクがある以上、リアルなツアーは出来ません。何とかしてお客様と会える場所を作れないか、そんな思いを抱えながらネットで情報を検索していました。

 

山本さんが見つけたのは、コロナ禍で増えてきた『オンライン〇〇』といったサービス。

 

山本:これだ!」と思いました。オンラインのツアーなら、お客様と直接会えなくても、つながることができる。しかも感染リスクの心配はいりませんから。

たった17日間で商品化

山本さんが重視したのはスピード感。4月末に山本さんの頭の中でアイデアが生まれてから、3日後には社内でトライアルツアーを実施。しかし、社内から出たのは厳しい意見ばかりだったといいます。

 

山本:最初はパワーポイントで作ったスライドショーを使って観光地を紹介したのですが、これでは説明会の域を出ず、お客様から料金をいただけないと却下されました。

 

ツアーの臨場感やライブ感、旅ならではの出会いや交流など、旅の魅力をオンラインでどう演出するか、山本さんは試行錯誤を繰り返します。ライブ感や臨場感を出すために、ライブ中継のパートと事前に制作しておいた動画コンテンツを組み合わせる形のオンラインツアーに辿り着きます。

 

山本:中継先の観光地の皆さんが、快く協力してくれたからあの短期間で商品化できたのだと思います。中継の時に、横断幕で迎えてくださったり、参加者が喜ぶ演出を工夫してくれました。観光先が山奥で通信環境が悪い場合には、事前に撮影した動画を活用することにしました。

 

そうして参加者が楽しめる工夫を凝らし、1週間後に再トライアルを実施した山本さんは、なんとか商品化にこぎつけます。さらにその1週間後には商品のプレスリリースを出すと同時に、募集を開始。短い募集期間に関わらず、第一回目のオンラインバスツアーは一般参加者5人とメディア関係者を乗せ、満席で出発しました。山本さんの頭の中にアイデアが生まれてから世に出るまで、わずか17日という驚異のスピードでした。

 

山本:中小企業のいいところは、新しいことをすぐに実行に移せることだと思います。他社がオンラインバスツアーをやっていなかったこともあって、『日本初』という称号を得ることが出来たのはとても大きかったです。スピード重視で、あとは走らせながら改善していけばいいと思ったのが良かったのかも知れません。

 

山本さんの戦略通り日本初のコトバスオンラインバスツアーは注目を集め、数々のメディアで紹介されます。そのPR効果は絶大で、その後も満員御礼が続き、これまでに40種類以上のオンラインバスツアーを実施。参加者は延べ2000人以上という、異例の大ヒット商品となったのです。

 

17日間で商品化した3つのポイント

⚫︎ スピード重視でまずはやってみる

⚫︎ 臨場感、ライブ感を出すために動画を活用

⚫︎ 社内外の協力者を見つける

試行錯誤の結晶、日本初の『オンラインバスツアー』

コトバスオンラインバスツアーはZoomを活用した90分間の日帰りバスツアーです。

 

山本:ライブ中継と動画コンテンツを組み合わせて、観光地を2〜3箇所巡ります。道中にはクイズを楽しんだり、歌をみんなで歌ったり。中継先の観光地で事前に郵送した特産物をみんなで一緒に食べる時間もあります。お客様同士が交流しながら観光地を楽しんでいただける、とてもアットホームなオンラインバスツアーです。

日本初のオンラインバスツアー「石見神楽ツアー」

コトバスオンラインツアーは、定員が15人と少人数制ですが、ここにも山本さんのこだわりがあります。

 

山本:Zoomでは最大25人が一画面に顔出しできますが、人数が多ければ、お客様同士の交流も希薄になってしまいます。私たちスタッフがしっかりフォローできて、旅の出会いや交流を楽しんでいただける最適な人数が15人だったんです。

 

また、開催時間や所要時間にもある理由が。

 

山本:90分というのは、気軽にご参加いただける丁度良い時間なんです。私たちのツアーは10時に出発し、11時半で終了です。その後30分間は任意で残れて、お客様同士の交流時間になっています。午前中で終わることで、参加するハードルがグッと下がるんですね。例えば、午前休をとって弊社のオンラインバスツアーに参加し、他の参加者さんから『行ってらっしゃい』と見送られて、午後お仕事するという方も結構多いんです。私たちも午前中はバスツアー、午後はそれ以外の業務に集中できるので一石二鳥なんです。

 

また、Zoomを使ったことがない人や、やり方がわからない人には無料で練習の機会を提供するなど、サポート体制も充実。参加時に使える背景画像(車内の風景)を提供し、非日常の演出に細部までこだわるおもてなしも参加者から支持されている理由のひとつです。

「没入感」を生むための様々な工夫

リピーターも多く、月に複数回参加される人もいるとか。コトバスオンラインツアーが参加者を魅了する理由を尋ねました。

 

山本:旅行というのは、非日常体験です。とはいえ、コトバスオンラインバスツアーは皆様ご自宅である『日常』から参加されますよね。ですから、非日常の世界に入ってもらうための「没入感」を大切にして、様々な工夫をしています。例えば、お客様にはリアルなツアーと同じ『旅のしおり』とツアー中に皆で一緒に食べる特産物が事前に手元に送られ、旅のワクワク感を前日から感じていただきます。また、事前にお送りしているキットの中には『紙製シートベルト』も入っているんです。

 

 

運転手の「ご乗車のお客様はシートベルトをお締めください」の合図で、画面に映し出された15人がコトバスお手製のシートベルトを肩にかけます。

 

山本:皆さん同じ画面を共有しているので、それだけで一体感が生まれるんです。

 

さらに、リアルなバスのエンジン音や道中の美しい風景など、音と映像でバスの旅を演出。映像に合わせて山本さんが場を盛り上げます。事前に撮影された映像と山本さんが話す姿を見た参加者の中には、本当にバスが動いていると勘違いする人もいるほどリアルなんだそう。

 

山本:よくお客様から「山本さんは本当にバスで移動しているのかと思った!」と言われるんです。本来であれば数時間はかかる距離を一瞬でワープしているのに(笑)。

 

 

また、出発前に参加者全員で行うリアクションの練習も恒例行事です。

 

山本:オンラインだからこそ、一体感を感じる瞬間を作ることが大切です。また、リアルなツアーだと質問する方は少ないのですが、オンラインツアーだとチャット機能があるので質問がドシドシ寄せられ、結果、濃いコミュニケーションが生まれることもオンラインならではのメリットです。

 

そして人気なのが、地域の特産品・名物料理をスタッフが実食するコーナーとのこと。

 

山本:お客様の代わりに、訪れた先で当社のスタッフが地域の特産品や料理を実食するコーナーがあるのですが、これが予想外に大人気で(笑)。もちろんお客様ご自身が食べられるわけではないんですけど、スタッフが本当に美味しそうに食べるのを見ると 「今度は自分で食べに行きたい!」と思って頂けるようです。

 

顧客が喜ぶオンラインの仕掛け

⚫︎ 参加者が嬉しい少人数制と所要時間

⚫︎ 出発前から旅への期待感を上げる演出(例:しおり、特産物、シートベルトなど)

⚫︎ ライブ中継、録画動画、アテレコを駆使し、非日常を演出

⚫︎ チャット機能を活用することで、参加者同士のコミュニケーションを活性化

 

コロナ禍で生まれたコトバスオンラインツアー。コロナ禍で旅行ができない状況の中、旅の楽しみである知らない場所との出会いや人との交流をオンライン化。さらにその地域の風土を感じられるよう、動画やライブで臨場感を演出し、特産物で参加者と地域が幸せになる仕組みを確立。withコロナ時代の新しい旅の形が生まれました。

 

【発展編】では、オンラインツアーの制作やオペレーション体制の話、得られた成果や気付き、さらには今後の展望などについてご紹介します。

 

オンラインバスツアーの大ヒットに学ぶ 動画活用の新たな可能性【発展編】はこちらから

 


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「体験」もオンラインで売れる! 前編|

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取材社情報:

琴平バス株式会社

高松営業所:⾹川県仲高松市朝日町5-3-18 ボイスビル1階
電話:087-823-5678

 

コトバスオンラインツアー:

https://www.kotobus-tour.jp/online/

 

YouTubeチャンネル:

https://www.youtube.com/watch?v=_mlZi2Bwmxk&t=54s