100万円の採用コストがゼロに! ライブ配信で最適な人材を採用できたワケ

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歯科の院長が毎日Facebookでライブ配信をしている。ターゲットは、開業歯科医(経営者)。歯科衛生士の場合、採用コストが一人100万円以上と言われる歯科業界で、採用コストを一切かけずに最適な人材を獲得できたのもライブ配信のおかげだという。一体何が起きているのか。ライブ配信のこだわりや裏舞台を取材しました。

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年名 淳(としな・じゅん)

としな歯科医院 院長

 

1998年「としな歯科医院」を開院。「削らない、痛くない、待たせない歯科医院」として地域に愛される歯科医院。ブログ経由で県外から通院する患者も少なくない。初診の予約は平日だと1ヶ月先まで、土曜日だと半年先まで取れないという人気ぶり。2020年7月から歯科医と歯科衛生士向けにFacebookライブ配信を開始。以降、毎日ライブ配信を継続し、現在までに600回以上のライブ配信、累計53万人に届くまでになっている(2022年3月末時点)。また、歯科衛生士のための無料オンラインサロン「G☆DH」を主宰。歯科衛生士向けの書籍『なぜあの歯科医院は歯科衛生士が長く働き続けているのか』(デンタルダイヤモンド社)を2022年4月に刊行。

採用コストゼロなのに、最適な人材を採用できたワケ

編集部(以下、−−) 年名先生は2020年7月10日にライブ配信を開始し、以降ほぼ毎日Facebookでライブ配信をされていますね。

 

年名院長(以下、敬称略) はい、基本的には診療が終わって夕食後、21時以降の配信が多いです。短い時は30分程度、長い時は1時間前後でしょうか。3月23日に、600回目の配信をしたところです。これまでの累計で53万人以上に届けることができています

 

−− 2年経たずに600回とはすごいですね。ライブ配信の内容やターゲットについて教えてください。

 

年名 ターゲットは開業歯科医と歯科衛生士です。患者さんやスタッフマネジメントに対するお困り事に関する内容です。

 

−− ライブ配信の目的はなんでしょうか。

 

年名 歯科医師や歯科衛生士にとって、役に立つ情報を発信することです。我々歯科医師は、「先生」というポジションにいるために、知識や技術が高ければそれで良いと思い込んでいる人が少なくありません。結果として、患者さんや部下に対するコミュニケーションを自分では気づかないうちに軽視してしまっているケースが非常に多い。開院して24年のキャリアを持つ歯科医師として、自分の考えやあり方を発信することで、現状の不満や将来に漠然とした不安を抱いている若い歯科医師や歯科衛生士の力になれればとライブ配信を始めました。私たち提供側がより質の高いサービスで貢献できれば、患者さんもどんどん賢くなります。それに我々が応えていく。患者さんのニーズに応えられない歯科医院は、自ずと淘汰されていってしまう時代が来るのかな、と思っています。

605回目のFacebookライブ配信!【歯科衛生士を長期雇用するための仕組み】

−− ライブ配信で採用に成功したと聞いたので、てっきりライブ配信で募集を呼び掛けたのだと思っていました。

 

年名 いいえ、一切していません。コンテンツは、歯科医師と歯科衛生士に向けた現場にいる私ならではのコミュニケーションやマネジメント術、メンタルコントロールなどについてです。

 

−− そうなんですか!採用までの経緯を詳しく教えてください。

 

年名 ライブ配信を始めて3ヶ月たった頃でした。Facebookのダイレクトメッセージを受け取ったんです。「先生のところで働きたい」と。10年を超えるキャリアを持ったベテランの歯科衛生士でした。

 

−− 昨今、歯科衛生士を一人採用するのは非常に大変だと聞きました。

 

年名 はい。歯科衛生士の新卒一人の求人倍率は20倍と言われています。採用するための広告費やコーディネート費用だけでなく、採用した後には育成費用もかかります。新卒でも、経験者でも、1人採用すると100〜150万円以上の支出があることも珍しくありません。

 

−− その採用コストがゼロにも関わらず、素晴らしい人材を採用することができたのはなぜでしょうか。

 

年名 ライブ配信の良いところは、押し売り感のないことです。視聴者は、自分と合わないと思えば、視聴を止めればいい。ライブ配信側には、視聴者の顔色や表情が見えません。これが私には都合がよかったんですね。自然体で語っていれば、自分に共感、支持してくれる人だけが集まるようです。これが、ライブ配信の強みです。

 

−− 確かに、HPなどを見ても、その医院の雰囲気や院長やスタッフさんの人柄は分かりませんよね。

 

年名 そう。働いてみたけど、思ったところと違ったと、転職を繰り返す歯科衛生士はとても多いです。連絡をくれた彼女もいくつも医院を転々としていました。それで、「同じ場所で長く働きたい。この医院のやり方を一から学びたい」とまで言ってくれました。ベテランの歯科衛生士さんだったのですが、お給料の希望を聞いたら、「院長が決められる金額で結構です」と。これには驚きましたね。

80万円投じたYouTubeではなくFacebookライブだった理由

−− 情報発信のツールにFacebookライブを選んだ理由はなんですか?

 

年名 最初やろうとしたYouTubeを出来なかったからです。2013年くらいから消費者への訴求効果の高い動画活用の必要性を感じていました。でも、「カメラの前で話せない」、「シナリオが書けない」、「編集をする時間がない」など、いろんな理由をつけて後回しにしていました。2016年頃、一流のセミナー講師からYouTube活用を学ぶ決心をしたんです。当時、個別コンサルティングに80万円ほどかけました。

 

−− 80万円!それは始めるしかありませんね。

 

年名 それが・・・しっかり学び、自分で出来るスキルを身に付けたにも関わらず、とうとうYouTubeを始められませんでした

 

−− え!なぜですか?

 

年名 「ちゃんとやらなくちゃ」という自分の中のブレーキが一番の原因でした。自分の顔を出して、情報発信をするのに、「ちゃんとしなくちゃ」って。そんな自分のブレーキを取っ払ってくれたのが2020年6月頃に知ったFacebookライブ配信でした。日本一のビジネスライバーである赤城良典さんが、「継続するための奥義は『ちゃんとしないをちゃんとする』を実践することです」とおっしゃっていて。これなら出来る!と思いました。

 

−− 赤城さんは、Facebookライブは、完璧でなくていい。見切り発車でいい、とおっしゃっていますね。

 

年名 はい。もう一つのFacebookライブ配信を選んだ理由は、数字に惑わされることなくブレずにいられるからです。

 

−− 数字とは?

 

年名 YouTubeだと、チャンネル登録数や再生回数といった、いずれは広告収入による収益化というところに意識がいってしまいます。本質はそこではないとわかっていても、どうしても気になる。その点、ライブ配信は、そういった数字は一切気になりません。というよりも、ライブ中は話すことに集中して数字を気にする余裕がないんです。私のライブ配信は生で見てくれるのは毎回数人程度ですが、視聴者数で一喜一憂することはありません。

 

−− とはいえ、ライブ配信600回以上やリーチ数53万人というのはすごい数字です。

 

年名 実績の一つではあるので、そういう数字はうまく活用すれば良いと思います。3つ目の理由は、YouTubeに比べ、Facebookライブは時間と労力とコストがかからないことです。編集作業をアウトソーシングしている事業者も少なくありませんが、Facebookライブは編集が必要ないのでコストはゼロです。編集作業を自社でしている場合は時間と労力がかかります。そういった意味でも、個人事業主や零細企業経営者には、始めるハードルが低いと思います。

Facebookライブ配信の知られざるギフト

−− Facebookライブの魅力を教えてください。

 

年名 一番は自分自身が成長できることです。私は診療やスタッフとのやり取りでの学びや気づきを、ライブ配信やブログのコンテンツにしています。患者さんやスタッフに「なぜ伝わらなかったのか」「どんな言葉を、どんな順番で話したら伝わるか」を常に考えています。スタッフに確認し「どの部分がわかりづらかったか」フィードバックをもらうこともあります。そんな日常の中に、無限のコンテンツやリソースがあり、それをアウトプットすることで自分自身も成長しています

 

−− ライブ配信の視聴者の方からも「今日の内容はとても心に沁みました」とか「自分のことを言われているようでした」といったコメントもありましたね。

 

年名 もう一つ、ライブ配信の魅力は「素の自分で情報発信できること」。本当に普段の自分でいいんです。頑張る必要はありません。普段通りの自分で、いつもスタッフに伝えていることやスタッフとのコミュニケーションから得られる学びを発信しているからこそ、家族やスタッフからも「認め」や「褒め」をもらうことができるのだと思います。これは孤高な事業主や経営者にとっては最高のギフトじゃないでしょうか。

 

 

−− 外では良いことをいって、家や社内では別人みたいな経営者は多いですよね。

 

年名 歯科医師も同じだと思います。業績とか専門性の高さだとか、業界の識者に認めてもらうことに、走ってしまう人が多い。でも、豊かに生きるってそういうことじゃないと思います。そういうことを、今後も情報発信していきたいと思います。

 

−− 最後に、継続する秘訣を教えてください。

 

年名 1度の配信につき、1つのテーマをお話しすることを心がけています。私は生来飽き性ですから、続かない気持ちはわかります。2015年頃、当時ブログを8年間毎日更新している経営者の方から言われたんです。「誰もができることを、誰にもできないほど続ければ一流の証だ」と。その言葉に触発されて、ブログを始めました。6年5ヶ月余り、毎日更新しています。

 

−− なかなかできることではありません。何が年名先生を突き動かしているのでしょうか。

 

年名 社内に「指示してくれる人」や「叱ってくれる人」がいない私たち経営者は、言行不一致でも許される立場です。しかし、それでは部下から信頼を得ることができません。 なので、「毎日ブログを1年365日続ける!」と宣言してやり切ったことで、部下からのリスペクトが得られたり、自分自身の成長を実感できたりしました。 その成功体験からFacebookライブ配信も継続できています。“ちゃんとしないをちゃんとする”ライブ配信で、素のままの自分が発信し続けることで、結果として採用に繋がったり自院(自社)の職員の教育にも繋がり、費用対効果(コストパフォーマンス)は相当高いものになっています。
スマホ、三脚とイヤホンマイクがあれば、すぐにでもできちゃうのがライブ配信です。本業と違って“見切り発車”で許されますので、まずは挑んでみてください。

 

 

【取材者情報】

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YouTubeチャンネル 現役歯科医コーチ 年名 淳 チャンネル

 

 

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