全国広報コンクール 映像部門で最高賞! 先進自治体から学ぶ動画活用の極意 【佐賀市シティプロモーション室 前編】
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2014年に発足した佐賀市シティプロモーション室は、知名度の低かった市の魅力や価値を発掘し発信することをミッションに様々なプロジェクトを進めてきました。自治体らしからぬユニークな動画で常に注目を集めています。そして、令和3年全国広報コンクールの映像部門で最高賞である総務大臣賞に輝いたばかりの江頭室長に、動画制作における成功秘話を聞きました。
県内初の快挙!全国広報コンクールで最高賞受賞
佐賀市北部にひっそりと佇む温泉郷、古湯・熊の川温泉郷のプロモーション動画『本当にあったぬるい話』は、令和3年全国広報コンクール映像部門で最高賞である総務大臣賞を受賞しました。
古湯・熊の川温泉郷の特徴である「ぬる湯」の効果をユーモラスに紹介する一編50秒のショートムービー(全5本)は、映画『金田一耕助シリーズ』を彷彿とさせるようなミステリードラマさながらの映像で始まり、拍子抜けするようなオチで視聴者をクスッと笑わせてくれます。各エピソードの最後に、映画のエンドロールのような演出で「ぬる湯」の効能を分かりやすく印象的に伝える作りになっています。
江頭室長(以下、敬称略):古湯・熊の川温泉郷の旅館の皆さんと一緒にいただいた賞です。本当に嬉しいです。
満面の笑みで取材に応じてくれたのは、3年前から佐賀市シティプロモーション室の室長を務める江頭さん。佐賀市の魅力や価値を県内外に発信し、認知度やブランド力を向上させることが江頭さんの仕事です。
江頭:佐賀市をPRする際に最も大きな課題は、佐賀市の知名度が本当に低いことなんですね。九州の方ならまだしも、全国的には「佐賀市がどこにあるのか分からない」という方も少なくない。そんな状態では旅行先にも選んでもらえません。まず選択肢に入るためには、佐賀市の認知度を上げていく必要があります。そこで2014年に発足したのがシティプロモーション室です。
市役所のHPだけでなく、SNSでの発信による情報拡散を重視してきたというシティプロモーション室。当初から動画の活用に力を入れてきたそうです。
江頭:自治体が地域の魅力を発信しようとすると、綺麗な写真を使って観光地や名物料理などを紹介することが多くなります。でも、それはどこの自治体でもやっていることですから、どうしても埋もれてしまうんですよね。とにかく見てもらえるように発信をする必要があって、当初から話題性が高まるような動画の活用に取り組んできました。
その中で最も大切にしてきたのは、企画の最初から関係者と一緒に考え、目的とプロセスをしっかり共有することだと江頭さん。
江頭:今回、賞を頂いた『本当にあったぬるい話』も、温泉旅館の皆さんと一緒に、企画の初期段階から目的や制作内容などプロジェクトの全容を共有し、一丸となって共につくりあげられたことがこのプロジェクトの成功に大きく寄与したと思います。この企画は全て旅館の皆さんから聞いたお話を材料に考えたものですし、撮影に全面協力して頂いたこと、テレビやラジオでの宣伝にも一緒に出演して頂いたこと、本当に全て一緒に取り組んできました。その分、今回のプロモーション動画に大きな期待を寄せられていましたので、私たちにとってはプレッシャーでもありましたけど(笑)。
動画活用のポイント1 「外部の力」×「地元の力」
シティプロモーション室は、設立時からシティプロモーションアドバイザーに株式会社FACT代表の三寺雅人氏を迎え入れています。三寺さんは、2009年にカンヌライオンズのプロモーション部門で日本初となるグランプリを受賞する他、多数の広告賞を受賞しているトップクリエイター。シティプロモーション室による数々のプロモーションは、企画から制作に至るクリエイティブ全般を三寺さんが監修しています。
江頭:地元の本当の価値や魅力は、外部の目が入ることによって初めて認識できたり発見できたりすることが非常に多いように思います。私たちにとっては「当たり前の日常」でも、他県の方に取っては「珍しいこと」や「新鮮なこと」に着目し、それを魅力的なコンテンツにしていくというのは、内部の目線だけでは、なかなか難しいんです。今回、賞を頂いた『本当にあったぬるい話』もまさにそうです。
また、その一方で、映像の制作体制とリアリティの追求においては、地元佐賀の力を上手く引き出す工夫をされています。
江頭:実際の撮影や制作に関しては、市内の映像制作の事業者さんをプロポーザル方式で選んでいます。また、動画に出演するキャストの皆さんも、佐賀県内で活躍する俳優さんを起用しています。プロの俳優で、かつ佐賀の方を起用することによって、動画にリアリティを与えていく。これも三寺さんのアイデアです。
シティプロモーション室の体制や役割分担は、どのような形でやられているのでしょうか。
江頭:シティプロモーション室は私を含めて3人です。プロジェクト全体の指揮や他部署との連携を私が主に行っています。もう1人がHP全般の業務を、もう1人がSNSを担当しています。
外部アドバイザーの目で 佐賀市の魅力や価値を改めて発掘し、コンテンツ全般を監修する。ひとつひとつの動画は、地元佐賀のプロフェッショナルを起用し映像のリアリティを上げる。シティプロモーション室は、制作現場と一体となって全体の指揮を執り、完成した動画コンテンツをオウンドメディアで最適化して発信する。この絶妙な役割分担が、全国の数あるプロモーション動画に埋もれない、見られる動画コンテンツを生み出しているのです。
動画活用のポイント1:「外部の力」×「地元の力」
⚫︎ 外部の目を入れることで、内では気づかない魅力や価値を発掘できる
⚫︎ 映像制作は地元の事業者と俳優を起用しリアリティを追求する
⚫︎ 全体の監修を外部アドバイザーと共に行うことで高いクオリティを保つ
動画活用のポイント2 タイミングを逃さない
当初、古湯・熊の川温泉郷のプロモーション動画『本当にあったぬるい話』は、記者発表の場を設けメディアの力で一気にPRをする予定でした。しかし、2020年の夏は新型コロナウイルスの影響だけでなく、九州各地で記録的な豪雨による被害もあり、予定していた記者発表の機会を失うことに。
江頭:せっかく準備を進めてきた記者発表ができなくなり、大々的に発信する機会は失いましたが、そこで公開を先延ばしにする選択肢はありませんでした。長い自粛期間で疲れている方々に、是非「ぬる湯」でリフレッシュして頂きたかったので、『Go Toトラベルキャンペーン』に何としてでも間に合わせる必要がありました。情報発信において、タイミングを逃さないことはとても重要です。
予定していた記者発表は無くなったものの、2020年7月13日にはプレスリリースを出し、プロモーション動画を公開、特設サイトもオープンします。結果は前述したとおり、自粛疲れをしていた多くの人が、「ふるくま温泉郷」を旅行先として選び「ぬるい体験」を満喫、大盛況となったのです。
江頭:私もプライベートで『ふるくま』に旅行に行こうと思ったのですが、どこも満室で予約が取れませんでした。「予約が取れないのに嬉しい」そんな感覚は初めてでしたね(笑)。
情報を発信するだけで満足せず、誰に届けたいのか、その人にどんな行動を起こさせたいのかを明確にすることで、タイミングが明確になると江頭さんは教えてくれました。
動画活用のポイント2:タイミングを逃さない
⚫︎ 情報発信のタイミングを間違えない
⚫︎ プロジェクトの目的、ターゲット、ゴールを明確にすればタイミングは自ずとわかる
動画活用のポイント3 多角的な情報発信
では、企画力のあるコンテンツをつくり、絶好のタイミングで発信した後、多くの人に見てもらうためにはどのような工夫をしているのでしょうか。
江頭:ただHPに掲載しただけでは 動画を見て頂ける方が増えません。SNSを活用して、動画を見てもらう機会を増やすことを徹底しています。FacebookやTwitter、Instagramへ頻繁に投稿することで動画の拡散を図る、これがとても重要です。
また、佐賀空港、佐野常民記念館、橋の駅ドロンパといった人の流れが多い場所の大型スクリーンで動画を紹介するなど、WEB上だけでなくオフラインの場面においても多角的に情報を発信したといいます。
江頭:動画以外のコンテンツも充実させました。『ぬる湯に魅せられた人々』と題して、移住された方々の声をシティプロモーション特設サイトで紹介するなど、動画とは全く違うコンテンツも活用しています。
このコンテンツは移住促進のプロジェクトでも活用でき、一石二鳥だとか。
江頭:人手は限られていますので、なるべく相乗効果を生むようなコンテンツの制作を心がけています。
動画活用のポイント3: 多角的な情報発信
⚫︎ SNSを活用し、その拡散力を利用する
⚫︎ 単発ではなく、頻繁な投稿を行う
⚫︎ オフラインでの発信や、動画以外のコンテンツで相乗効果を狙う
後半では、その他の動画プロモーション事例と、シティプロモーション戦略の大きな転換点となった気付きについて、詳しくお聞きします。
シティプロモーション戦略の転換点 自治体に欠かせなくなった動画活用
【佐賀市シティプロモーション室 後編】はこちらから
元エンタメ業界のプロである「よむどー」編集長 緒方による裏解説動画も公開中!
佐賀市公式ページ:
佐賀市シティプロモーション室ウェブサイト:
https://www.city.saga.lg.jp/promotion/main/
『本当にあったぬるい話』公式ウェブサイト:
http://www.saga-city.jp/nuruyu/
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