連載Vol.5(最終回)「稼ぐ力」を養う映像制作の秘技
映像で社員が育つ理由 活用の極意、教えます
INDEX
映像制作で社員の成長を促すという榎田竜路さんが考案した唯一無二の方法論を紹介している本連載。100秒程度の映像を制作する4過程「取材・整理・編集・伝達」を通して、社員に必要な3つの力(感じる力、考える力、行動する力)を鍛えることで、中小企業に不可欠な力である「稼ぐ力」を上げることが目的です。第1回目から、「取材」、「整理」について、論理的な解説と具体的な技を紹介してきました。第5回目の今回はついに最終回。4過程のうち「編集・伝達」についてお伝えします。映像完成まで、もう少しです。
▽これまでの連載を読む▽
連載Vol.1 「感じる力」が社員成長のカギ はこちらから
連載Vol.2 コミュニケーション力と自己肯定感を上げる取材の技 はこちらから
連載Vol.3 「感じる力」を育てる「画像言語」の撮影技術 はこちらから
連載Vol.4 映像制作のために必要な「整理」の技 はこちらから
伝達する手段を決める
こんにちは、アースボイスプロジェクトの榎田竜路です。
長かった連載もいよいよ終盤に近づいてきました。おそらく、あなたがこれまでに体験したことのない作業だったことでしょう。いつもは使っていない脳を使うので、疲れもあると思いますが、すでに「感じる力」と「考える力」は相当パワーアップしているはずです。最後まで一緒にがんばりましょう。
前回は、膨大な量の情報を整理し、テーマ設定をしました。
早く「編集」したい気持ちはわかりますが、その前に「伝達」する手段を決めます。といっても、今回は「100秒程度の映像制作」が目的なので、伝達する手段はおのずと映像になると思います。しかし、必ずしも映像である必要はありません。(撮影を含む)取材、整理ができていたら、伝達する手段はポスターの場合もあります。また、社史だって作れるし、漫画だって作れるかもしれません。
そう、「取材・整理」をしっかりすることで、さまざまな形で伝達することができるのが、この講座の狙いです。今回は映像で伝達するので、そのための編集方法についてお伝えします。
コミュニケーション能力が飛躍する「ゼロから価値を生む」作業
編集のゴールは明確です。それは、「時間軸に沿って情報を効果的に配置すること」に他なりません。何もない状態から一つの物語を作り上げる、この「無(ゼロ)から有(価値)を生む作業」がコミュニケーション能力を飛躍的に上げることになります。
「情報を効果的に配置する」とはどういったことでしょうか。ここで、映像制作の目的とゴールに立ち返ってください。ゴールはこの連載で繰り返し言っているように「稼ぐ力を養うこと」です。その目的が「良い人材を採用すること」の場合もあれば、「問合わせにつなげること」かもしれません。いずれにしても映像ができることは、「事実を伝えること」と「してほしい行動を相手に促すこと」です。
「してほしい行動を相手に促す」ために不可欠なのが、視聴者に「空想させる」ことです。前回の「整理」で、空想誘導をしやすい物語を準備したと思います。つまり編集では、そのゴールである「空想誘導」しやすいように情報を効果的に配置していく作業になります。空想誘導のコツは、映像に情報の全てを出すのではなく、「機(タイミング)・度(強弱)・間(つながり)」を駆使することです。
特に重要なのが「間」です。情報が少なすぎると間が持たないし、多すぎると追いつけない。この絶妙な匙加減は、稽古を重ねるしかありません。実際の講座では、私とコミュニケーションをとりながら編集作業をしますが、この時「感じる力」と「考える力」は常にフル回転しています。「どのように感じたのか」を聞き出し、「それなら、こうしたらどうか」というやり取りの中で、当人の感性を研ぎ澄ましていくのです。そうやって編集を繰り返していくうちに、違和感のない自然な流れの映像に仕上がっていきます。皆さんは、同僚やチームの人たちと共有しながら、お互いの感性を刺激し合い、高め合って作業することをお勧めします。
これができるようになると、視聴者が「買ってみようかな」「問い合わせてみようかな」「行ってみようかな」など「〜しようかな」が自然に生まれます。前回もお伝えしましたが、今の時代「買ってください」「来てください」といった押し売りは視聴者が興醒めしますから、絶対にしないでくださいね。
「急」はNG
では、視聴者が自発的に「〜しようかな」となる映像にするために、具体的にどうしたらいいかというと「急」を除けばいいんです。つまり、映像言語である文字、画像、音声が「急に出る」「急に消える」「急に動く」など、「急」の動作を、一切無くしてください。「急」な動作は、視聴者に違和感しか与えず、その度に集中力が途切れてしまいます。空想誘導どころか、映像を途中で消されてしまうかもしれません。
情報をたくさん詰め込みすぎるのも絶対NGです。過去の講座の受講生は、初期の段階では100%情報過多でした。よく動画の情報量はテキストの5000倍とか言われていますが、私はそうは思いません。情報量はテキストの方がむしろ多いと思っています。ただ、空想誘導による情報量は無限です。なぜなら、空想誘導により視聴者が、自然にイメージしたり、考える「間」が生まれるからです。このことからも、空想誘導の重要さがお分かりいただけることでしょう。
情報が多いな、と感じたら映像に盛り込んでいる情報を最小限にしましょう。
最小の情報とは主語と述語と目的語。例えば「〇〇をしている株式会社〇〇です」といった具合です。そこから本当に必要な情報を肉付けしていけばいいのです。
バランスは取らない、ハーモニーを奏でる
多くの人が、全体のバランスを取ろうとしますが、それはやめてください。バランスが取れている状態というのは 、言い換えると“止まっている状態”です。先ほども言った通り、映像の場合、「機(タイミング)・度(強弱)・間(つながり)」を駆使して、視聴者に空想させたいので、“動いている状態”がとても重要になります。ですからバランスを取らずに、ハーモニーを奏でるイメージで映像制作をしてください。
Vol.1で人間が持っている2つの判断システムについて紹介したのを覚えているでしょうか。下図の通り、人間の判断はSystem1 (非言語)とSystem2(言語)の2つのシステムで構成されているというものです。そして、9割以上が「直感→行動」という流れをとっているからこそ「感じる力」を育てることが重要だということをお話ししてきました。
ここからは私の持論になりますが、このSystem1はさらに二つに分類できます。一つは「自覚できない感覚」で、もう一つは「自覚できる感覚」です。
「自覚できない感覚」というのは、「心臓が動いている」とか「息が出来ている」とか、自覚できない無意識下によるものや深層心理を指します。「自覚できる感覚」とは「よし、やるぞ!」という感情や、「味覚」「素敵・カッコいい」「なんか、いいな」という、自分で自覚し感じることができるあらゆる感覚を指しています。
映像制作の4つの過程「取材・整理・編集・伝達」というのが、私が考案した「型」になります。この「型」によって、無意識の領域にできている「感じ方」に影響を与え、「考え方」と「行動」を変容させるのです。無意識の領域にできている「感じ方」というのが、System1の下部にある「自覚できない感覚」にあたります。
この「型」を用いて、取材・整理・編集といった稽古を積むことで、「自覚できない感覚」の領域にある「感覚発動傾向」に新しい秩序を生み出します。「感覚発動傾向」とは、つまり「美意識」のことです。企業であれば、課題解決ではなく、全く新しい価値を創造することができます。そのために必要な能力である「感じる力」「考える力」「行動する力」を、映像を制作する過程で飛躍的に向上させるだけでなく、自分や他人の肯定感の質までも上げてしまう技の数々をお伝えしてきました。
さらに、この映像制作から得られる最大の副産物が「相互認知容易性」です。これは何かというと、「お互いがよく知っている状態」のことをいいます。取材の過程で、社員同士が取材し合うことで生まれます。中小企業において、「お互いをよく知っている」状態は、稼ぎ続けるためには必要不可欠です。「お互いをよく知っている状態」が失われると、たとえ短期的に稼げても、忙しすぎて社員が辞めてしまうという最悪の事態に陥ってしまいます。しかし、取材で、相手の生い立ちや成り立ち、ビジョンやミッションなどを知ることで、自然に「相互認知容易性」が高まり、社員の能力も上がることで、結果として稼ぐ力を養うことにつながるというわけです。
頭だけで理解することは難しいでしょう。しかし、この4つの過程「取材・整理・編集・伝達」を経験したとき、あなたはあなたの中で湧き起こる「変化」に気づくはずです。
ぜひ、課題解決ではなく、価値開発のための映像制作の一歩を踏み出してください。
これまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
榎田さん、ありがとうございました。
榎田さんが代表を務めるアースボイスプロジェクトは、ポスター制作指導から映像制作指導まで、さまざまなサービスを展開されています。ご興味ある方は、下記情報を参照いただき、直接お問合せください。
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